研究概要 |
本研究課題は,2次元イオンペア超分子構造体の創製を目指し,平成23年度はグラファイト型窒化炭素のユニット分子であるメレム,メロン及びシアメルル酸の合成と,メレムをメインビルディセグブロックとした自己組織化挙動を,各pH下における電解質水溶液/電極界面でのSTM観察を実施した.メレム,メロン及びシアメルル酸は,メラミンを出発物質として熱分解反応などから合成した.それぞれの合成条件を制御することにより,メレム,メロン(メレムオリゴマー)及びシアメルル酸の合成に成功し,TOF-MS及びIRなどの構造同定,さらには吸収スペクトルから,ターゲット分子の同定ができた. また走査型トンネル顕微鏡(STM)観察では,メレムが中性状態であるアルカリ性水溶液~弱酸性水溶液存在下,ハニカム構造⇔最密充填構⇔ランダム構造という電気化学的なorder-order-disorder相転移を見出すことに成功した.さらに低pH領域の酸性水溶液下では,2次元ハニカムネットワーク構造は構築するものの,それ以上の高密度な構造(充填構造など)は構築されなかった.これは,低pH領域ではメレムがプロトン化したことが考えられ,充填構造など高密度な配列では静電的に反発することから,ハニカムネットワークのような低表面密度な構造のみが構築可能であると考えられるしかしながら,静電的な反発を考えると,ハニヵムネットワークにおいて溶液中に存在するオキソアニオンとイオンペアを形成したことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書記載通りに,オリゴマー及びメレム誘導体の合成に成功し,且つイオンペア構造体の構造観察に成功したと考えられる.また新しの知見として,メレムとメラミンなど異種分子間で水素結合可能な分子を2次元で交互に配列することにも成功しており,純度の問題はあるが,順調に研究展開している.
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今後の研究の推進方策 |
合成したシアメルル酸及びメレムオリゴマー(メロン)の純度は低いものの,分光学的に合成物がターゲット分子であることを同定した.またイオンペア2次元超分子構造に関する知見は得られたものの,イオンの同定には至っていない.次年度以降は,合成物に精製による高純度化及びその水溶液中での挙動評価(高解像度観察)を行う.特にイオンペア構造体であるこどを視覚的に評価することを目指し,メレムとその誘導体との混合下での自己組織化挙動及びその電気化学的特性評価などを実施する.
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