研究課題/領域番号 |
23681016
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
上村 忍 熊本大学, 自然科学研究科, 助教 (60423498)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 自己組織化 / ナノ材料 / 超分子構造 |
研究概要 |
水溶性のメレムのpKbから,各pHにおける水溶液-電極界面における自己組織化挙動,及びメレムと同類のヘプタジン環誘導体であるシアメルル酸の合成及びその界面自己組織化挙動を走査型トンネル顕微鏡 (STM) 及び電気化学測定により評価した. メレムに関しては,pKb1が12であり,弱アルカリ性及び中性中においては,メレムが基板に対して平行に横になった状態で形成するハニカム構造と充填構造,そして,メレムが垂直に立ち上がった状態で集合したと推測されるファイバー構造が構築された.しかし,カチオン化するpH1などの酸性条件下ではファイバー構造は構築されなかった.このことから,最もメレムが密に集合化しているファイバー構造では,カチオン化に伴う静電的反発から構築されなかった,と推測される. 前年度合成したシアメルル酸のSTM観察では,メレムと異なる挙動を示した.まず,シアメルル酸の状態では極めて溶解度が低いことから,前駆体のシアメルル酸カリウムにより実施した.現在までの結果,電気化学的及びpH変化ではランダムな吸着構造が確認されたが,明確なシアメルル酸の分子像観察に成功した.また,分光学的手法によるシアメルル酸同定では,高い純度と考えられていたが,STM観察ではごくまれにメラムが観察された.このことから,シアメルル酸誘導体は金基板への吸着力がメレムよりも強いこと,不純物の存在が自己組織化に影響を及ぼしていたことが推測される. これら自己組織化に関しては,イオンペアや水素結合による相互作用以外にも,イオン化したハロゲンも利用可能なハロゲン結合に関しても,検討を行い,配列構造構築に成功した. またメロンを物理修飾した電極による電気化学では,触媒作用を見出すことに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては,メレム及びシアメルル酸の2次元イオンペア構造をめざし,単体・混在系における自己組織化挙動評価,及びメロン分散溶液によるメロン薄膜の作製と電気化学的評価が目標であった.予定通り,各分子のpH依存性とメレム-シアメルル酸混合系の自己組織化,メロン薄膜の電気化学に関して実施した.特にメレムのpH依存性では,メレムのサイドでの相互作用はカチオン化または対アニオンの影響は見受けられず,高度に配列することが確認され,過塩素酸(無機)アニオンとメレムカチオンが存在する配列であることが示唆された. しかしながら,分光学的に高純度のシアメルル酸であったが,分子レベルでの解像度を有するSTMでは,ごくわずかに含まれている不純物が単体での自己組織化に影響を及ぼしていることが確認された.これにより,現在混合系における自己組織化挙動が不明確であることが認識され,現在高純度精製を実施している. また,近年ハロゲンイオンを導入した場合,ハロゲン結合も相互作用の一つであることが示唆されており,ハロゲン結合とイオンペアとの相違をするため,ハロゲン結合に関しても合わせて自己組織化挙動を評価した.その結果,ハロゲン結合においては水素結合と同程度の強さを有した状態では十分に2次元自己組織化構造を構築することが可能であり,現状の分子ではハロゲン結合の可能性はないと考えられる. このように,イオンペアの自己組織化構造の構造構築には至ってないものの,それを解決すべく問題点は確認されており,ほぼ純情に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
イオンペア構造体の構築のためには,より高純度化のためのシアメルル酸の再精製,または加圧による規則性の高いメロンの合成による高純度シアメルル酸の合成を実施する必要性がある.この手順により得られた高純度なシアメルル酸の自己組織化挙動評価を実施し,イオンペア構造体の構築を目指す.さらに構築されたイオンペアの機能評価の一環として,電気化学的な触媒能(水や過酸化水素などの分解)にて構造安定性と機能評価を実施する. それ以外のヘプタジン環誘導体(カルボジイミド基,アジド基などの導入)も並行して合成,自己組織化評価を行い,各単体との自己組織化挙動,電気化学的・有機化学的物性評価を実施し,将来的に共有結合可能なビルディングブロックとしての布石を打つ. メロンに関してはペプチドによる分散も合わせて実施し,より高い分散溶液の作製,薄膜化とその導入最小限界の追求を目指す.
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