本研究では量子ネットワークの構築のための室温動作する量子情報固体素子実現に向けた基盤研究を主にダイヤモンド中の窒素‐空孔複合体(NV)中心を用いて行っている。スケーラビリティという観点から数量子ビットを持った多くの量子レジスタを量子もつれ状態にして量子ネットワークを形成し、量子計算・量子暗号通信を実現しようという理論提案がある。NV中心はこのアーキテクチャで要求している数量子ビットの量子レジスタとして期待できる。その量子レジスタとしては最低でも4量子ビットが量子ネットワーク形成には必要であるとの理論提案があるが、最近我々は4量子ビットでの量子もつれ生成に成功した。固体では量子ビットを増やすことは難しく、我々の知る限り固体では我々の結果が量子もつれ生成した最高量子ビット数となる。 また、これまで我々は単一光子の電流注入による発生に室温において成功していたが、成果は今年度、Nature Photonics誌に掲載された。世界で初めてとなる、室温で電気的動作により単一光子発生素子の実証を成功した例である。 近年、我々は固体材料の中でも、室温動作、広範囲な発光波長、長いスピンコヒーレンス時間等の観点から、ダイヤモンド以外のワイドギャップ半導体にも注目して研究を行っていた。SiCに注目し、単結晶及びナノ粒子での研究を行い、SiC単結晶及びナノ粒子で、室温で光検出磁気共鳴を観測することができていたが、今年度は照射実験によりその信号強度を増やすことに成功した。応用の観点から重要な知見と考えられる。
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