研究課題
我々の身の回りの多くの情報記憶素子はパソコンの登場以来、磁石がまかなってきた。磁石の方向(N極S極)を2進法の"1"と"0"信号として情報を記憶している。この信号の読み取りや書き取りに磁界が使われる。磁界を生成するために電流が使用され、電力消費が生じる。磁石の特性(磁気特性)を磁界でなく、電界で制御できれば電力消費は生じない。本研究は、電界が金属表面極近傍に引き起こした分極電荷による、表面原子構造変化に伴う磁気構造変化の解明を目的とする。この新規特性は、結晶構造と磁気構造の間に強い相関のある磁性金属で発現する。鉄はその代表である。走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて、鉄ナノクラスター表面に局所的に電界パルスを印加し、強磁性BCCから反強磁性FCC構造に(またはその逆に)1nmの精度で変化できる。この現象の物理的解明と制御により、金属を用いた新規電界制御型スピンメモリー創成を目指し研究を行っている。平成24年3月31日までに、銅(111)上の鉄ナノクラスターの電界による相転移の相図を作成することができた。さらに、相転移ダイナミクスに関する知見を得た。相転移はFCC-BCCの相転移バリアを超えることで起こる。これに振動数10^<12>[1/s]をかけたものが相転移のスイッチング確率であり、この逆数がライフタイム[s]である。各相転移のライフタイムを測定より求めると、強磁性BCC相は約14.5ms(@3K)と約14.9ms(@5K>、層間反強磁性FCC相は約13.2ms(@3K)と約10.5ms(@5K)であった。この結果より相転移確率を求めると、低い温度ほど相転移の確率は下がることが分かった。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通りに、銅基板上の鉄ナノクラスターの相図の作成、磁気相転移スイッチングのダイナミクスに知見を得ることができた。
結晶構造と磁気構造が密である系であれば、同様の現象が発現すると考えられる。スレーターポーリング曲線にあるように、特に3d磁性金属同士を組み合わせた系では、原子構造と磁気構造が密であり、僅かな原子・結晶構造の違いにより、大きな磁気構造の変化が生じると予測できる。この系を用いて新たな金属磁気電気結合の発見と理解を目指す。
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http://www.eng.chiba-u.ac.jp/outProfile.tsv?no=1461