研究課題
我々の身の回りの多くの情報記憶素子はパソコンの登場以来、磁石がまかなってきた。磁石の方向(N極S極)を2進法の“1”と“0”信号として情報を記憶している。この信号の読み取りや書き取りに磁界が使われる。磁界を生成するために電流が使用され、電力消費が生じる。磁石の特性(磁気特性)を磁界でなく、電界で制御できれば電力消費は生じない。本研究では、走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて、鉄ナノクラスター表面に局所的に電界パルスを印加し、強磁性bccから反強磁性fcc構造への(またはその逆)相転移制御を1nmの精度で行った。銅(111)上の鉄ナノクラスターの電界による相転移の相図を作成し、さらに相転移ダイナミクスに関する知見を得た。相転移はfcc-bccの相転移バリアを超えることで起こる。これに振動数10の12乗[1/s]をかけたものが相転移のスイッチング確率であり、この逆数がライフタイム[s]である。強磁性bcc相は約14.5ms(@3K)と約14.9ms(@5K)、層間反強磁性fcc相は約13.2ms (@3K)と約10.5ms(@5K)であった。この結果より相転移確率を求めると、低い温度ほど相転移の確率は下がることが分かった。結晶構造と磁気構造が密である系であれば同様の現象が別の磁性体でも発現すると考えた。そこで、化学気相成長法で作成したFe(110)ウィスカ単結晶上にニッケル超薄膜を成長させ、磁気電気結合の発現を目指している。Bcc-Fe(110)とfcc-Ni(111)の格子不整合は小さいが「ずれ」がある。結果、Ni薄膜には歪みが生じ異なる2相をニッケル1,2,3層目で確認した。現在、この相の原子構造・詳細な電子スピン構造の解明を行い、電界による相転移制御を目指している。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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