研究課題/領域番号 |
23681021
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
佐々木 善浩 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (90314541)
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キーワード | 脂質ナノチューブ / 細胞間コミュニケーション / リポソーム / 人工細胞膜 / せん断流 |
研究概要 |
近年、脂質から形成されるナノチューブ(脂質ナノチューブ)が遠距離の細胞間を連結することで細胞間コミュニケーションを制御していることが明らかになっている。脂質ナノチューブは細胞間コミュニケーションを理解するための新しい機構として基礎生物学的、医学・薬学的に極めて重要である。しかしながら、膜タンパク質を解析する場合に用いられる人工細胞(リポソーム)のように、脂質ナノチューブを人工系で容易かつ大量に作製する手法は未だ見出されていない。このような背景のもと、本研究では、脂質ナノチューブを用いた全く新しい概念の細胞膜の連結手法を確立し、細胞から人工細胞、人工細胞から細胞、さらに細胞から細胞の物質、情報輸送による細胞内機能の制御とその解明を実現することを研究全体の目的とした。その中で当該年度においては、荷電ナノ粒子の泳動によるリポソームからの脂質ナノチューブの作製手法の確立に重点をおいて研究を行った。これまでの研究において、10-100nmのナノ微粒子と脂質供給源としての球状リポソームを用い、脂質ナノチューブが作製できることを予備的に見いだしてきた。この結果をふまえ、この手法を用いた脂質ナノチューブ作製法について、脂質の種類、電圧の印加方法、温度、ナノ微粒子の表面物性などの諸因子と、脂質ナノチューブの生成速度、脂質ナノチューブの長さ、内径、膜物性との相関について、定量的な解析を行った。その結果、比較的広範な種類の脂質からナノチューブが作製できること、電圧強度に依存した脂質ナノチューブの作製が可能であること等を明らかにした。また、副次的な結果として、電圧印可のみならず、固定化したリポソームに対して、せん断流を与えることによっても、極めて効率的にナノチューブを作製しうることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画時に、初年度においてはナノ粒子の泳動によるリポソームからの脂質ナノチューブの作製手法を確立することを目的とし研究を開始したが、リポソームからの脂質ナノチューブ形成を定量的に評価することで、脂質ナノチューブの形成を制御する手法を確立できたこと、さらに当初計画していなかったが、せん断応力を用いる脂質ナノチューブ形成手法を見いだした点で、当該年度の当初の研究目的を概ね達成できたものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
電場を用いる脂質ナノチューブ作製手法の確立については当初の予定どおり研究が進んでおり、研究計画の変更などは特にない。磁性を用いるナノチューブ作製手法については、当初の計画通り、脂質ナノチューブが作製できることを予備的に明らかにしたが、実用的にこのナノチューブを細胞系に展開する上では、さらに高い強度の磁場を印可することが必要であることが明らかとなってきた。この点を解決するため、今後の研究においては、超伝導磁石などのより高強度な磁場印可装置を用い研究を行う。また、せん断応力による脂質ナノチューブ作製については、当初の予定にはなかったが、今後も引き続き検討を行っていく予定である。
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