研究課題/領域番号 |
23681023
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊都 将司 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (10372632)
|
キーワード | 1分子科学 / 単分子イメージング / 超解像 / 高分子 / 反応ダイナミクス |
研究概要 |
H23年度は、主として測定系の構築、最適化に主眼を置き、1)本研究遂行に必要な高剛性の顕微イメージング装置の構築、2)2色単分子蛍光検出系の構築、3)3次元単分子イメージング装置の構築に取り組んだ。まず1)に関しては、除振機能を有する光学実験台の上に自作顕微鏡を構築した。オプティクスの設置位置を可能な限り実験台に近づけ、またCCD検出器用の取付金具を設計し、実験台上のネジ穴を用い検出器を実験台に直付した。装置の評価のため、単色検出系でポリマー薄膜中に固定化した「動かない」蛍光分子をイメージングし、その位置の揺らぎを追跡、解析し、構築した装置の性能を評価した。次いで、2)の2色検出系を構築した。蛍光を波長ごとに分割する光学系を検出側に設置し、2台のCCD検出器で異なる波長の蛍光を同時に検出可能にした。発色帯の異なる2種の色素を固定化したポリマー薄膜を参照サンプルとして用い、それぞれの色素からの蛍光を独立に検出し、各検出系におけるイメージング性能(S/N比、位置決定精度など)を評価した。今年度後半からは、3)のプローブ蛍光分子の位置を3次元的に追跡可能な装置の構築を開始した。我々オリジナルの手法は光学系が幾分複雑となるため、まず先行研究を参考に3次元分子追跡用の光学系を構築した。シリンドリカルレンズを単分子蛍光イメージング装置の検出側に挿入し検出光学系に収差を導入すると、CCD検出器に結像される蛍光スポットの形状が楕円となり、楕円率は蛍光分子の光軸(Z軸)に沿った位置に対応して変化することを実験的に確認した。ピエゾステージを用いて蛍光分子のZ変位と楕円率との相関を実験的に求め、校正曲線を得た。この手法を用いることで、高分子薄膜中の蛍光分子に対して、3次元的な位置変位を追跡することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H23年度交付申請書記載の研究実施計画に対して、おおよそ計画通り研究を遂行することができた。一点、3次元イメージング装置の構築に関して多少計画を変更したため、オリジナルの光学系構築に関しては計画通りに開発が進まなかった。しかし一方、従来法を応用することで3次元蛍光イメージングと単分子追跡を達成し、ゲスト分子と材料、基板との相互作用に依存した拡散挙動の相違を確認することまで成功し、この意味では当初計画を上回るペースで研究が進んでおり、総合的には(2)と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、上でも述べたオリジナルな方法に基づく3次元イメージング装置の構築に精力的に取り組むと共に、従来法を上回る解像度を目指す。また位置決定精度に関しては、設計上は市販の光学顕微鏡を上回る剛性を有するにも拘わらず、自作装置において劇的な位置追跡精度の向上が見られていないので、高精度化に関してもさらに研究を進めその原因を究明し、当初目的達成のため種々の検討を行う。
|