研究課題/領域番号 |
23681037
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
重 尚一 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60344264)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 地球観測 / リモートセンシング / 防災 / 気象学 |
研究概要 |
本研究は、洪水予測等に重要な地形性豪雨を、複数機の衛星に搭載されているマイクロ波放射計から精度良く推定することを目指すことを目的にしている。今年度は、昨年得られた紀伊半島の地形性降雨の改良結果について論文発表した(Shige et al. 2013)。また、昨年度に引き続き、2009年8月に台湾に甚大な被害をもたらした台風Morakotに伴う地形性豪雨の事例を対象に研究を進めた。地形性豪雨発生域判定アルゴリズムをTMIだけでなく、現在運用中の全てのマイクロ波放射計に適用し、さらに、赤外放射計データによって高時間高分解マップを作成した。台風Morakotが台湾を通過している期間で高時間高分解マップデータを積算して、台湾の地上雨量計ネットワークから得られた雨量水平分布と比較検証したところ、良い一致を示していることが分かった。 一方、地形性豪雨発生域判定手法を熱帯降雨観測衛星の全観測範囲で利用可能とするため、いくつかの領域に別れている地形データを1つに統合し、マイクロ波放射計降雨推定アルゴリズムに組み込んだ。また、地形性豪雨タイプとして用いる降水鉛直分布モデルをグローバルに利用可能とするため、マイクロ波放射計降雨推定アルゴリズムを改訂した。さらに、衛星降雨データを準リアルタイム配信するシステムに導入することを考え、気象データとして再解析データだけでなく、客観解析データも利用できるように変更した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
台風Morakotの事例にの研究ついては、論文投稿まででき、非常に順調に進展することができた。また、衛星降雨データを準リアルタイム配信するシステムに、地形性豪雨発生域判定手法を導入するための作業も順調に進展した。地形性豪雨に伴う降水鉛直分布モデルの構築は、地域によってその特性が大きく異なるため、さらなる研究が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き、地形性豪雨発生域判定手法の改良と地形性豪雨に伴う降水鉛直分布モデルの構築を行い、これらに基づいて降雨量を高精度で推定できるようにマイクロ波放射計アルゴリズム本体の改良も行う。 地形性豪雨発生域判定手法については、防災的利用の見地から豪雨事例を取り逃さないようにすると同時に、気候学的利用の見地から月平均降雨量などの統計値に異常がでないように配慮して閾値を設定する。今年度、準リアルタイム配信するために気象データとして客観解析データを利用可能としたが、さらに予報値データの利用の検討も行う。 地形性豪雨に伴う降水鉛直分布モデルの構築については、降水鉛直プロファイルの地域特性に関する検討を進める。また、熱帯降雨観測衛星搭載降雨レーダの観測データだけでなく、マイクロ波放射計観測データや雲解像モデル・シミュレーションデータを複合利用することによって、上空の固体降水粒子の特性についても吟味する。 マイクロ波放射計アルゴリズム本体の改良については、これまで対象としてきたGSMaP (Global Satellite Mapping of Precipitation)マイクロ波放射計アルゴリズムの改良を引き続き行うとともに、ベイズ統計に基づいて開発されてきたGPROF (Goddard Profiling)アルゴリズムへの導入についても検討を行う。
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