研究課題/領域番号 |
23681039
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
笹倉 靖徳 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (10400649)
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キーワード | 脊索動物 / 発生 / 進化 / トランスポゾン / ゲノム |
研究概要 |
本研究では、脊索動物カタユウレイボヤを用いてトランスポゾン技術を元にして突然変異体を単離することと、突然変異体を基軸にして遺伝子機能と脊索動物の進化メカニズムの解明を目的としている。本年度には、Gal4エンハンサートラップ系統のスクリーニングにより、Mkx2.5のトラップ系統が単離された。この系統は鰓で遺伝子を発現する系統であり、その発現パターンから鰓裂の形成に深く関わっていることが予想された。実際に本系統は鰓の形態に異常が認められたが、その異常がNkx2.5の機能喪失により引き起こされたものかどうかについて引き続き解析していく。また脱リン酸化酵素をコードする遺伝子DUSP1のトラップ系統の解析において心臓の形成に異常が見られ、引き続き詳細な解析を進めたい。その他トランスジェニック系統を用いてホヤの変態期における神経系の構築の際にPhox2遺伝子がコリン作動性ニューロンの形成を抑制することを明らかにした。Sleeping Beautyトランスポゾン技術をカタユウレイボヤに導入するため、本年度は基礎情報を蓄積すること、つまりこのトランスポゾンのカタユウレイボヤ内での転移傾向を詳細に調べることとした。その結果、本トランスポゾンはカタユウレイボヤゲノム内でローカルホップ転移を引き起こすものの、他の脊椎動物と比較してその確率が半分程度であることが判明した。今後得られた情報を元にSleeping Beautyを用いた変異体単離を進めていく。さらにカタユウレイボヤの遺伝学的技術の発展のために、人工ヌクレアーゼを用いた遺伝子改変(ノックアウト)技術の導入を目指し、人工ヌクレアーゼがホヤゲノムに変異を導入できることを明らかにした。今後この逆遺伝学的技術も本研究に取り入れ、より効果的に遺伝子機能を明らかにし、脊索動物の進化メカニズムを探っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで判明していなかった新しい遺伝子機能につながる変異体候補を順調に単離できたこと、また技術面についてはSleeping Beautyトランスポゾンの導入に遅れがあるものの、遺伝子ノックアウト法というこれまでカタユウレイボヤで達成されなかった技術の導入も伴ってより効率的に遺伝子機能にアプローチできる体制が整いつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
Gal4エンハンサートラップ法などトランスポゾン技術を元にしていく路線を進めるが、遺伝子ノックアウト法が整備されつつある現在の状況を考慮し、逆遺伝学的アプローチで特定の遺伝子に着目し機能面により早く到達するというストラテジーを現路線に加え、脊索動物の発生と進化メカニズムを探るという大目的をより効率よく達成するための技術的な面での改良を行っていく予定である。
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