研究課題
本年度は、人工酵素TALENを用いたカタユウレイボヤ遺伝子のノックアウト法を確立した。TALENにより効果的に遺伝子をノックアウトできること、G0世代において機能にアプローチできること、TALENを組織特異的に発現させることでコンディショナルノックアウトを達成できることを示した。また、Crispr/Cas9を用いてもカタユウレイボヤ遺伝子を破壊できることも併せて示した。TALEN等によるノックイン法は強力な手法であり、繰越し申請によりノックイン法のホヤへの導入を引き続き検討した。結果、ノックインイベントはホヤ内で生じることを突き止めた。一方その確率は低いため、遺伝子機能解析法として利用するには更なる改良が必要であることが判明した。上記の手法を中心に用い、Hox2遺伝子が耳相同器官の形成に必要であること、Hox13が輸精管先端構造の形成に必要であること、FGF3が変態を制御することを示した。その他遺伝子機能としては、Phox2遺伝子のコリン作動性ニューロン分化への貢献、GABA作動性ニューロンのホヤ変態の制御、Hox1の甲状腺の後半部のパターンをOtx遺伝子と拮抗する形で形成していること、AP2転写因子がホヤ特異的遺伝子であるセルロース合成酵素遺伝子の転写調節を直接制御していることを明らかにし、脊索動物の発生及び進化メカニズムを理解する重要な知見を得ることができている。Gal4エンハンサートラップ系統については、新たに2つの系統を樹立した。この系統のトランスポゾン挿入位置の同定を進めている段階である。また、新規Gal4トランスポゾンドナー系統を樹立した。次年度にその有効性を試す。また、Sleeping Beautyのローカルホップ転移については、対応型ベクター系統と転移酵素発現系統の掛け合わせを進めた。現在この2重系統の飼育を進めており、次年度に転移の有効性を確認する。
2: おおむね順調に進展している
TALENやCrispr/Cas9によるホヤの遺伝子ノックアウトに成功したこと、これらの技術基盤を基にして数多くの発生関連遺伝子の新規機能を明らかにしたこと、それらの機能解析から脊椎動物の進化についての理解を深めつつあること、研究成果を論文として順調に報告していること、以上の理由から、順調に進展していると判断される。
最終年度であるため、特にこれまでの研究で大きく機能解析が進展したHox遺伝子群を中心に据えて研究を行い、発生・進化のメカニズムを解明する。またゲノム編集技術をさらに発展させるような技術改革にも取り組み、ホヤにおける遺伝子機能解析手法の発展に貢献したい。また、できる限り多くの研究成果を論文という形で発表する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (14件) (うち招待講演 3件) 図書 (2件)
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巻: 141 ページ: 481-487
10.1242/dev.099572
Biological Bulletin
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