研究課題/領域番号 |
23681042
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
齊藤 博英 京都大学, 次世代研究者育成センター, 准教授 (20423014)
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キーワード | RNA / 合成生物学 / 翻訳 / RNP / バイオエンジニアリング / 遺伝子回路 / 細胞分化 / 遺伝子発現制御 |
研究概要 |
細胞機能を自在に制御する人工生体分子複合体や人工システムを創成することは、シンセティック・バイオロジー分野の研究目標の一つである。しかしながら、機能性分子のデザイン研究は端緒についたばかりであり、設計された分子やシステムが目的の挙動を示さない場合が多い。従って、機能性分子のデザインのための新しい戦略・技術の開発が期待されている。本研究では、生体内で多彩な機能を担うRNA-タンパク質複合体(RNP)をデザイン・創製する方法を活用し、細胞の機能や運命を自在に制御できる技術を開発する。具体的には、以下2つの課題の達成を目指す。 1、RNP相互作用に基づいた新しい遺伝子発現制御システム(RNPスイッチ)の確立。 2、RNPスイッチを活用した細胞運命制御システムの構築。 本年度は、siRNAやマイクロRNAの前駆体であるshRNAを人為的に改変し、哺乳類細胞内で特異的に発現するタンパク質に依存して、目的遺伝子の発現を活性化する、人工RNP-ONスイッチを作成することに成功した。shRNAのループ部分には、任意のタンパク質結合モチーフを導入することができる。このタンパク質結合モチーフに特定のタンパク質が結合することで、shRNAを切断するダイサー酵素のshRNAへの結合が阻害され、その機能を抑制できる。したがって、特定のタンパク質発現に応じて、目的遺伝子を活性化する「ONスイッチ」が構築できる。また標的タンパク質に結合するRNAアプタマーをmRNAに組み込み、哺乳類細胞内で発現する入力因子の発現に依存して、mRNAからの遺伝子発現を定量制御できる技術の開発に成功した。さらに、構築した人工RNPスイッチを活用して、フィードバック制御機構により、細胞内タンパク質の発現レベルを調節できるシステムの開発に成功した。これら技術から、目的タンパク質と自身のmRNAを相互作用させることで、細胞内環境に応じた、タンパク質発現量の精密な制御が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、研究目的に記載した、RNA-タンパク質相互作用に基づいた新しい遺伝子発現活性化システム(ONスイッチ)の確立に成功したため
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今後の研究の推進方策 |
基盤技術としての開発に成功したRNAスイッチ技術を活用し、標的細胞の運命・分化制御システムへと展開する。
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