研究概要 |
本年度は、まず難培養細菌ファイトプラズマの全ゲノムをクローニングする系を確立するため、これに先立ち、クローニング用ベクターの調査および検討を行った。酵母において大きなゲノム断片をクローニングするためのYAC(酵母人工染色体)ベクターはいくつか開発されているため (Science 317:632-8, 2007)、これらを改変し、クローニング用ベクターとして検討した。ベクターは、酵母および大腸菌において複製するように設計されており、かつ、酵母においては環状のゲノムとして保持されるように設計されている。このベクターを用いたクローニングは、ベクター配列とターゲットとなるゲノム断片とが 60 bpほど重複するような「のりしろ」配列を設計すると、酵母の細胞内で相同組換えによるアッセンブルが自然に起こるというTAR (Transformation-Associated Recombination) cloningを応用している (Science 317:632-8, 2007)。本研究ではこの手法に倣ってストラテジーを確立した。「のりしろ」配列は、プライマー合成によって作製した。 加えて、難培養細菌ファイトプラズマの全ゲノムを感染植物から抽出する系の確立を行った。感染植物におけるファイトプラズマ菌体の量は非常に少ないため、植物の核およびオルガネラゲノムの混入を防ぐ必要がある。遠心分離法およびパルスフィールドゲル電気泳動法を用いることで、純度の高いゲノムを抽出することができた。 精製したゲノムをテンプレートとして用い、これとベクターとを混合し、酵母の形質転換を行った。小さなゲノム断片のクローニングに成功したため、大きなゲノム断片のクローニングを試みた。
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