クローニング・ストラテジーの確立 昨年度、難培養細菌ファイトプラズマゲノムを酵母においてクローニングするストラテジーの確立を目指し、ベクターの追加調査を行ってきた。本年度はさらに詳細な調査および検討を行った。新たに検討したベクターは、これまでのベクターと同様に酵母においては環状のゲノムとして保持されるように設計されているが、形質転換時における偽陽性クローンが得られにくいように設計されている。このベクターを使うことでクローニング効率が大幅に改善されることを確認した。この手法を用いることで、難培養細菌ファイトプラズマのゲノムを酵母においてクローニングするストラテジーを確立した。 大規模ゲノムクローニングを確認する系の確立 加えて、大規模なゲノム断片のクローニングに成功したかどうかを確認する必要がある。これにはマルチプレックスPCRが最適であろうと考えられるため、この系の確立を試みた。ファイトプラズマゲノムの複数の領域に対してプライマーを設計し、これを混ぜ合わせ、1つのPCR反応で9断片(9ゲノム領域)を増幅することができる系を確立した。プライマーは、全ゲノム内に1コピーのみ存在する遺伝子に対して設計する必要があり、プライマー同士のアニーリングおよびプライマー内のセルフアニーリングを防ぐ必要があるため、詳細な解析が必要であった。これにより、数百kbpの断片のクローニングに成功したかどうかを1チューブ、1PCRリアクションで確認することができる。この系により、ゲノムクローニングの実験が速やかに進展するものと考えられる。加えて、確立したマルチプレックスPCRの手法を応用することで、ファイトプラズマ感染植物中のファイトプラズマ系統の簡易判別を行うことができることが判明したため、このストラテジーの確立も行い諸学会において発表した。
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