研究課題/領域番号 |
23681045
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
不破 春彦 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (90359638)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 海洋天然物 / 全合成 / 構造活性相関 / 生物活性分子の設計 |
研究概要 |
数種のヒトがん細胞に対し,強力な細胞増殖阻害作用を示す海洋マクロリド天然物ネオペルトリドの構造活性相関解析及び生物活性評価を実施した。ネオペルトリドの大環状骨格に含まれる不斉中心の重要性に焦点を絞った類縁体合成を行った結果,本天然物のナノモル濃度での細胞増殖阻害作用には,オキサゾール含有側鎖がテトラヒドロピラン環に対してアキシアル配向することが必須であるほか,大環状骨格に対する13位n-プロピル基の配向が重要であることが示唆された。一方で,C9位及びC11位の置換基そのものは活性発現に必要ではなく,大環状骨格そのものの簡略化が可能であることも明らかとなった。以上の構造活性相関解析をもとに,数種の構造単純化類縁体を合理的に設計し,これらがサブマイクロモル濃度でA549細胞の増殖を阻害することを示した。以上の知見は,ネオペルトリドの作用解析に必要な種々のプローブ分子の合理的設計指針を与えるものである。 また,海洋マクロリド天然物リングビヤロシドBの人工類縁体13-デメチルリングビヤロシドBの全合成を達成した。本全合成では,ネオペルトリド全合成の場合と同様に,マクロリド骨格をエステル化と閉環メタセシス反応により構築する収束的な合成戦略を採用した。ブロモジエン側鎖はStille型反応により構築し,アグリコンのグリコシル化はSchmidt法により実施した。人工類縁体13-デメチルリングビヤロシドBの全合成は,天然物そのものの全合成に向けた重要な知見をもたらした。なお,KB細胞に対する13-デメチルリングビヤロシドBの細胞増殖阻害活性は,天然物の1/6程度であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度迄で,ネオペルトリドの構造活性相関解析は既にオキサゾール含有側鎖部分を残すのみとなっており,最終年度で充分に達成可能である。また,ネオペルトリドを合理的に構造単純化し,サブマイクロモル濃度で細胞増殖阻害作用を示す新規類縁体を創出できている点は,当初の想定よりも達成度が高い。一方,リングビヤロシドBの全合成研究には多少の遅れが見られ,本年度でようやく人工類縁体13-デメチルリングビヤロシドBの全合成を完了した。合成終盤のブロモジエン側鎖導入及びグリコシル化の検討に時間を要してしまった点が原因である。総合的に判断して,本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,ネオペルトリドの構造活性相関解析を完了し,独自のファーマコフォアモデルの確立に繋げる。このためにはオキサゾール含有側鎖に関する種々の構造改変体を合成・評価しなければならないが,文献公知のオキサゾール含有側鎖合成法は効率及び柔軟性に問題があるため,改良を加える必要がある。また,本研究によりネオペルトリド及び構造類縁体を容易に調達できるようになったため,このアドバンテージを活かして詳細な生物活性評価や作用解析を進める。また,リングビヤロシドBの全合成は,本天然物に特徴的なアシル化された第三級アルコールを含む大環状骨格構築に困難を伴うと予想されるが,これまでの予備的な知見により,アシルケテンを活性中間体とする手法を適用することで解決する。
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