研究課題
本年度は,海洋マクロリド天然物ネオペルトリドのオキサゾール含有側鎖に関する類縁体の合成及び活性評価を行い,本天然物の強力な細胞増殖阻害作用の発現に必要な構造因子をすべて特定することに成功した。具体的にはC19-C20及びC26-C27二重結合と側鎖末端のカルバメート基が,ナノモル濃度での活性発現に必須であることを明らかとした。さらに,本天然物の詳細な生物活性評価及び作用解析へと研究を展開した結果,本天然物は細胞のエネルギーストレス状態に応じて殺細胞作用を示すこと,特にエネルギーストレス条件下でヒト白血病細胞HL-60細胞に対するアポトーシス誘導作用を示すことを見出した。また,ヒト肺腺がん細胞A549細胞やヒト膵臓がん細胞PANC-1に対しては,ネクローシス様の細胞死を誘導することも明らかとした。いずれの細胞においても,化合物の添加によりミトコンドリアの膜電位の脱分極が認められたことから,ミトコンドリアを起点とした細胞死であることが推察されるが,詳細な作用解析は今後の研究の課題である。また,本年度は海洋配糖体マクロリド天然物リングビヤロシドBの提出構造式の全合成を初めて達成することに成功した。本天然物に特徴的な,アシル化された第三級アルコールを含むマクロリド骨格は,我孫子-正宗不斉アルドール反応を用いたフラグメント連結と,アシルケテンを活性種とするマクロラクトン化反応により構築した。その後,ブロモジエン側鎖とラムノースユニットの導入を,昨年度の13-デメチル類縁体全合成と同様に実施し,リングビヤロシドBの提出構造式を全合成することができた。しかし,合成品のNMRスペクトルデータは天然標品のそれと一致せず,1H NMRでは天然物には見られないシグナルの広幅化が観測された。現段階では,天然物の立体配置の帰属に誤りがあったものと考察している。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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