研究課題
平成25年度では、平成23-24年度に確立したアザ電子環状反応による糖鎖導入法の一般性をさらに拡張するために、天然から誘導される微量の遊離糖鎖にも適応可能な方法を検討した。すなわち、ヒドラジン処理によって得られる様々な遊離糖鎖に対して独自のmodified PA法(ピリジルアミノ化法)によって、官能基化された各種糖鎖を得た。これら官能基化された各種糖鎖は、極微量であってもHPLCにより良好に単離、精製することができた。その後、アザ電子環状反応プローブと化学反応を用いて効率的に結合させることに成功した。そこで、各種の糖鎖プローブを様々なタンパク質へと反応させることにより、タンパク質表面に糖鎖クラスターを効率的かつ簡便に調製することができた。一方、生細胞と反応させることで、表層への糖鎖導入も実現した。アザ電子環状反応プローブとの化学反応からタンパク質や生細胞表面のアミノ基との反応においても、ナノグラム~マイクログラムのサンプル量を用いてワンポット手順で効率的に進行した。すなわち、ヒドラジン処理からアザ電子環状反応に至る行程において、天然から得られる極微量の糖鎖構造でも十分タンパク質や細胞上に再構築できる成果である。次いで、このように調製した人工糖タンパク質に対して、同様に電子環状反応を用いて蛍光標識し、非侵襲的蛍光イメージングを実施した。その結果、生きている動物内の各種臓器への選択的な集積、腎臓や胆嚢を経た排出、さらには癌への集積を自由自在に操ることに成功した。報告者のアザ電子環状反応を活用する手法により、タンパク質の生体内動態を、その表面に構築した糖鎖クラスターにより顕著に制御できることを初めて見出した。
2: おおむね順調に進展している
報告者のアザ電子環状反応を有効に活用して、癌細胞の効率的な標識、およびタンパク質や細胞表面への一般的な糖鎖導入を実現した。また、癌の転移を可視化することにも成功し、研究を順調に遂行していると評価する。
最終年度では、本研究課題の3年間で実現した生体分子や細胞への糖鎖導入の手法やイメージング手法を統合して、特にPETを用いた癌転移の高感度検出と制御に挑む。この際、68Ga-DOTA標識を基盤とする細胞のPETに関して、より温和な条件下で二世代の手法を検討する。一方、生きたマウスでの直接的な標識や糖鎖複合化を試みる。まずは、RGDペプチド等の癌細胞のリガンドを用いて、細胞表面の選択的な標識化を実現し、動物の中で組織選択的な標識と続くイメージングへと繋げる。
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