研究課題/領域番号 |
23681049
|
研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
戸谷 希一郎 成蹊大学, 理工学部, 准教授 (80360593)
|
キーワード | 糖鎖 / 疾患 / ストレス / 合成化学 |
研究概要 |
本研究では糖タンパク質糖鎖変換に注目した「糖鎖プロセシングに基づく疾患解析」を提案する。我々の体内では折り畳み不良タンパク質の蓄積によって生命システムの下流で多様な疾患が発症する。一方、生命システムの上流でタンパク質の折り畳み・選別・輸送・分解にまつわる品質管理を制御しているのは糖タンパク質糖鎖のプロセシングである。本研究では疾患発症過程上流の糖鎖プロセシング状況の変化を疾患の痕跡と捉え、これを足掛かりに多面的な疾患解析を行うことで、早期診断や新しい治療法の創発に繋げることを目的としている。 本年度は化学合成した人工糖鎖基質を健常および疾患モデル動物の肝臓から遠心分画した小胞体画分と反応させ、反応液のHPLCクロマトグラムに現れる疾患の特徴を比較した。具体的には非肥満型2型糖尿病モデルラット由来の小胞体画分から再構成した糖鎖プロファイルは健常モデル由来のそれと比較して糖タンパク質排出シグナルに相当する糖鎖群の生成が有意に増加することを見出した。また骨粗鬆症モデルマウス由来の小胞体画分から糖鎖プロファイルを再構成した場合、そのパターンには健常モデル由来の糖鎖プロファイルと比較して、糖タンパク質分解シグナルが明らかに増加する傾向が観察された。我々は両疾患特異的糖鎖プロファイルを分子レベルで理解すべく、糖鎖プロセシングに関わるタンパク質群について活性および発現レベルで解析を行ったところ、各タンパク質状況と糖鎖プロセシング状況に相関がある箇所も認められた一方、一部に両者に相関が認められない箇所があることが分かった。この結果は疾患が糖鎖プロセシング酵素の比活性にも影響を与えている事を示すものと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画で掲げた複数の疾患に対する糖鎖プロファイルによる評価を行い、疾患特異的に糖鎖プロファイル上に現れる特徴を抽出することができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
当初は平成24年度に人工細胞内における疾患特異的な糖鎖プロセシング解析を行う予定であったが、今年度までの成果で糖鎖が結合するプラットフォーム構造によって糖鎖プロセシング状況が変化する現象を初期的に観察することができたため、来年度は糖鎖結合プラットフォームに構造変化が糖鎖プロセシングに与える影響を精査した上で、人工細胞内での糖鎖プロセシング解析に繋げたい。
|