本研究は、いかに地域社会が持続性を維持してきたのか、グローバル化が急激に進行している中で地域社会が形成してきた持続性がどのような影響をうけ、そして今後どのように構築していくべきかという問題に対して、社会的少数集団の避難地帯としてのセーフティネット機能をもってきた山地利用の変遷から明らかにし、答えようとするものである。 この研究目的に対して、2012年度の研究計画は、ラオス北部における現地調査を継続し、データの収集を続けるとともに、研究成果の出版に向けて他の研究者との交流および協力関係を構築することであった。 調査地域のうち、ルアンナムター県において移住と水田開拓過程について調査を行った。この地域は、ラオス北部において近年もっとも人口流入が大きく、土地利用も急激に変化している地域である。盆地ごとに、ムアンとよばれる小首長国が成立していたといわれてきたが、このルアンナムター盆地は水田開拓には十分な面積をもつにもかかわらず、過去100年ほどの居住歴しかなかった。また、ムアンはタイ系民族による統治国であるといわれてきたが、この地域は山地民の入植が早く、かつ様々な民族が継続的に流入してきた地域であることがわかった。また、東南アジア大陸部では、近代化後に出生率と死亡率が急激に減少してきたといわれてきた。つまり、近代化前後での変化が主な研究対象であった。1970年代から現代までの人口および世帯構造を再構築してみると、1980年代に急激に出生率と死亡率が上昇していた。また、近年の死亡率の減少は、近代医療の普及だけが原因とは考えられたなかった。この原因について、今後も検討を進めていく必要がある。さらに、ペンシルバニア州立大学との協力関係を構築し、共同の成果出版を目指して作業中である。
|