研究課題/領域番号 |
23681055
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
田宮 遊子 神戸学院大学, 経済学部, 准教授 (90411868)
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キーワード | 所得保障 / 母子世帯 |
研究概要 |
本研究は、日英の母子世帯の経済的貧困の様相を諸側面から把握するとともに、所得保障制度が母子世帯のどのように機能してきたかを分析することを最終目的としている。2011年度は、1.母子世帯の生活実態の変化の分析、2.所得保障制度をめぐる議論と制度変遷の分析、3.所得保障制度の有効性の分析を主として行った。1については、主として公表統計を用いて母子世帯の生活実態の変化を検証した。両国ともに母子世帯が増加するなかで、その構成が変化(離別・未婚母子世帯の増加と母親の低年齢化)しており、これらのことが母子世帯の貧困リスクを高めていることが示された。2については、母子世帯を対象とした所得保障制度の変遷、および、変化をもたらした社会経済的背景や政策論議について、先行研究、行政資料、政府統計、民間運動団体資料等を用いて分析した。とくに、男性稼ぎ主と家事専業の妻を前提とした所得保障制度が母子世帯の増加を含む家族形態の変化にどのように対応してきたかに着目した。3については、主として公表統計を用い、就労、育児、世帯構成、生活時間の状況と所得保障制度の関係について分析した。女性全体をとりまく労働環境の変化や、とりわけ英国での就労促進的な政策の影響からパートタイム就労での雇用が増加傾向にあるが、雇用のパート化が経済的貧困化に必ずしも直結するのではなく、所得保障制度の設計により、むしろパートタイム雇用であっても貧困を緩和する効果があることを分析した。以上の分析は、翌年度以降の二次分析の基礎的分析となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
英国側の統計データの二次分析を行うにあたり、独自の分析を行い、研究成果を出すための基礎的な研究技術の向上に時間をかける必要があったため。具体的には、二次分析のための基礎的トレーニングや、すでに研究蓄積の豊富な研究者や専門機関からの専門的助言を受ける機会を十分に確保する必要があった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度以降は、母子世帯の生活実態(世帯構造、収入と消費の構造、社会保障給付の受給状況、就労状況、住宅事情、生活時間の実態、祖父母との関係)と所得保障の関係についてより詳細な分析を行う。今年度はとくに、日本における実態の分析に重点をおき、政府の公表統計、および、ミクロデータを用いた分析を行う。以上の研究の実施にあわせて、研究遂行の基礎となる分析上の技術力の向上を図るために、政府統計に関する専門機関のトレーニングに参加する機会や、専門家からの指導を得る機会をもつ。また、最新の研究動向、政策動向を理解するために、国内外の学会やセミナーへの参加、国内外専門機関での資料収集を行う。くわえて、得られた結果については、可能な限り学会発表等の形で公表を進めていくこととする。
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