本研究は、日英の母子世帯の経済的貧困の様相を諸側面から把握するとともに、所得保障制度が母子世帯の生活にどのように機能してきたかを分析することを最終目的としている。 2012年度は、まず、日英における、母子世帯を対象とした所得保障制度の変遷、および、変化をもたらした社会経済的背景や政策論議を明らかにするために、先行研究、行政資料、政府統計、民間運動団体資料等を用いて分析した。とくに、母子世帯を対象とする最低生活費の保障に関して、家族観や、家族と福祉制度がもたらすスティグマが、受給者側、政策策定側にどのような影響をもたらしてきたのかに着目して分析を行った。 次に、母子世帯の生活実態と社会保障制度の関係について分析した。この点について、主として母子世帯の祖父母との同居に着目し、日本において母子世帯がなぜ三世代同居の形態をとる者が多いのか、三世代同居は母子世帯にとってどのような目的と利益があるのかについて、日本家族社会学会全国家族調査委員会が実施した2008年全国家族調査 (NFRJ08)の個票データを用いた二次分析を行い、検討した。
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