研究課題
本研究は、日英の母子世帯の経済的貧困の要因を諸側面から把握するとともに、所得保障制度が母子世帯の生活にどのような影響を与え、貧困を防止する機能を果たしてきたかを明らかにすることを目的としている。前述した目的を達成するために、本年度は、まず、日本の母子世帯の就労と所得の関係に就いて検討した。母子世帯の母が正規雇用に就いていてる場合に非正規雇用の母子世帯よりも所得が高いことから、正規雇用で就労する要因をパネル調査の二次分析により検討した。その結果、子どもを出産した後も就労を継続するかどうかや学歴が正規雇用正規雇用に就き易さに影響し、祖父母との同居の影響の関連性は統計的に有意ではないことがわかった。次に、先進諸国における脱工業化後の新しい社会的リスクという観点から母子世帯の貧困問題について検討した。すなわち、世帯内の女性の就労が貧困削減に貢献しており、女性たちが家 族や公的支援を利用して仕事とケアの両立をはかることが、脱工業化社会における貧困化を回避するために必要なものとなっている。一方日本では、性別役割分業が根強いなかで、ケアと就労の両立に困難が伴っている。さらに、雇用の劣化とあいまって、女性の就労が貧困の削減 に果たす役割がきわめて小さく、とりわけ母子世帯の場合にとりわけ深刻な貧困問題として表れていることを確認した。さらに、イギリスと日本において、貧困に伴ってスディグマや恥の気持ちがどのように経験されるのか、また、それらを引き起こす要因について検討した。その結果、両国でスディグマは多様な形態で経験されていることを明らかにし、利用できる制度の仕組みや心理面を含む社会的関係から貧困の諸側面を検討する重要性について指摘した。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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Social Policy and Society
巻: Vol. 13, Issue 1 ページ: 143-154
学術の動向
巻: 5 ページ: 38-46