研究課題/領域番号 |
23682003
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館 |
研究代表者 |
永島 明子 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, その他部局等, 主任研究員 (90321554)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / 漆 / フランス / イギリス / スペイン / オランダ / 19世紀 / 工芸 |
研究実績の概要 |
前年度までの成果の一部を当館研究紀要『学叢』に「十八世紀フランスの蒔絵熱: 蒔絵層の剥ぎ取りと高度な模造の実例集」として発表し、また本研究の調査による副次的な成果を「ゴータ・フリーデンシュタイン城美術館蔵画帖:明治政府よりエディンバラ公アルフレッドへの贈答品」として当館の水谷亜希研究員と共著で発表した。秋には、オランダにてライクスミュージアム所蔵の漆器数十点を調査し、イギリスで調査予定の作品の類似品などのデータを採取できた。スペインではマドリッド国立装飾美術館において、スペインの修道院や教会に伝えられてきた南蛮漆器を一堂に集めた特別展を見学し、同館所蔵の関連作品を熟覧したほか、個人所蔵家の自宅、古美術商の店舗においても漆器を調査した。冬にはイギリスのV&A美術館、フランスのルーヴル美術館、パリ装飾美術館、コンピエーニュ・アントワーヌ・ヴィヴネル美術館などで漆器を調査し、特に19世紀パリの漆器コレクションの実例を詳しく知ることができた。日本の研究者が調査に赴くことで、所蔵館の担当者たちの日本漆器に対する関心が高まり、異なる所蔵館のあいだで共同の展覧会を模作する動きも生じてきており、有意義な研究交流を行えた。V&A美術館では、京都国立近代美術館の研究員の同行を先方にご許可いただき、同館が準備中の展覧会への協力も果たすことができた。ルーヴル美術館ではティエールの漆器コレクションを調査し、その全貌を把握した。コンピエーニュでの調査でも二年めにしてほぼ全体を見通せた。パリ装飾美術館では同館の学芸員もほとんど見ることがなかった漆器の調査であったため、多くの質問を受け、調査内容を先方の台帳情報にも活かす結果となった。本年度招聘予定であったパリ装飾美術館の主任学芸員の来日は、先方の職務の都合で26年度1月に延期となったが「日仏漆芸交流を学ぶ」と題した国際研究セミナーを実現できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、パリ装飾美術館が所蔵する日本の漆器を数多く調査することができ、また担当学芸員たちとの交流を深め、情報を交換することができた。また、ルーヴル美術館のティエール・コレクションやコンピエーニュの漆器調査も完了し、V&Aの漆器調査も順調に進めることができた。その結果、19世紀末から20世紀初頭の英仏の漆器コレクションの全容を具体的にとらえられるようになった。オランダやスペインでの調査は当初の計画以上の成果と言えるが、装飾美術館の学芸員の招聘が時期的に遅れてしまったことを勘案すると「おおむね順調に進展している」とすのが妥当と考える。
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今後の研究の推進方策 |
ティエール・コレクションの全体像が見えてきたので、これをまとめて当館の研究紀要に発表する。過去三年にわたってかなりのデータが蓄積されてきたので、来年度の調査分も合わせて、将来的にはデータベース化をはかりたい。また、本研究の目標である京都製漆器の近代的な特徴をつかむことについても、これまで実見した作品の詳細写真を見比べて、本研究としての見解を文章にしておきたいと思う。また、各国で交流を深めることのできた研究者たちとのつながりを大切にし、今後も連携して研究を進めていきたい。
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