研究概要 |
本研究は日常生活上重要な役割を果たすコミュニケーションにおいて,誤った文法・音韻(音声)・意味(語用 )情報を正しい情報に直して理解する「修正機能」がどのように行われているのかを脳機能計測を行うことで解明することを目的とする.また,修正機能は日本語以外でも見られることから,言語間に依らない「ユニバーサル」な修正機能のメカニズムを明らかにすると同時に,言語間で異なる修正機能ストラテジーについても明らかにする.本年度はまず日本語の文理解において、文法的に誤った文を理解する際にどのような要因が影響を与えているか、文を提示してどの程度自然かを7段階で判断させる心理実験を行った。誤った情報を修正する際にどのような他の統語的特徴が影響するのかを探るためである。要因としては、関係節の様に構造的に複雑か、それとも線形的で構造上単純か、また、文法上不適切な目的語(例:食べる→お茶)が距離的に近いかは慣れているかであった。結果、構造が複雑でも単純でも不適切な目的語が離れている場合において容認性が高かった。構造上の複雑さが影響を与えているか、単純な構造の場合と効果量を比較したところ、有意差が見られなかった。このことから、構造上の複雑さは、距離が容認性に与える影響の要因とは関係ないことが示唆された。本課題はフランス、リヨン第2大学の協力を得て行われるが、本年度は、同大学より、研究員である Anna Potocki 氏を招聘し、実験デザインと刺激のタイプ、実験条件などについて話し合い、日本、フランスで同じプロトコルで実験を行うことが決定した。
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