研究課題/領域番号 |
23682005
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 慶 東北大学, 加齢医学研究所, 教育研究支援者 (10547293)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 心理言語学 / 理論言語学 / 認知心理学 |
研究概要 |
本研究は日常生活上重要な役割を果たすコミュニケーションにおいて,誤った文法情報が含まれている場合にどのように再理解するのかを明らかにすることを目的とした。本年度は、言語表現上、どのような要因が文の自然な理解に影響を与えるのかを心理物理実験により解明した。ここでの要因とは、文の持つ構造的複雑性、および主語-述語に見られる依存関係中の非文法的要素の距離を指す(例:「お茶を縁側で何杯も食べる」における「お茶」と「食べる」の距離)。これまでの研究では、等位接続構造を持つ文(特に左端繰り上げ構文)において等位接続された項の位置を逆にすることで、非文法的な述部が含まれている場合でも比較的容認されることが明らかになっており、英語、フランス語でも観察されていた(例:(お茶、弁当、食べる)>(弁当、お茶、食べる)、「>」はより容認度が高いことを示す)。しかし文理解中に見られるこの効果がどのような際に起こるのかについては不明瞭であった。そこで、文の長さを統制した上で、構造的に複雑な場合と、単純な場合を比較することで複雑な構造を処理する認知的負荷が影響を与えるのかどうか検証した。同時に文の長さについても操作し、同じ構造的複雑性を有しているが文が長い場合と短い場合を比較することっで、距離、即ち処理時間が影響しているのかどうか検証を行った。その結果、構造的複雑性の文の容認性への影響は見られなかった。一方、距離については統計的有意に長い文の方が容認度が上がることが確認された。このことから文理解中に必要となる短期的記憶への時間的要因による負荷が大きく関与していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
心理実験による課題の検証を行うことはできたが、他言語における検証はまだ行えていない。また、研究代表者が病気になったことにより研究速度が落ちてしまったため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度行った実験に対しての追加実験を行い、モデルの精緻化を行う。 次に、様々なケース(形態的誤り、意味的誤りなど)について心理データを収集し、どのように人間が柔軟に文理解を行っているか追究する。 心理実験により有意な言語現象が見られた場合には、更にモデルを精緻化するために脳機能計測を行うことで文の修正メカニズムの解明を目指す。 フランス語や英語の母語話者を実験参加者として収集することが困難である場合は、外国人日本語学習者を対象として、学習者の日本語文理解と母語話者の日本語文理解の違いを心理データ計測により明らかにする。
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