研究課題/領域番号 |
23682009
|
研究種目 |
若手研究(A)
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
丹野 研一 山口大学, 農学部, 助教 (10419864)
|
キーワード | 農耕起源 / 古環境 / 西アジア |
研究概要 |
西アジアでは、ムギ作を中心とした人類初の農耕が、約1万年前に開始された。農耕が始まった当時の環境は、一体、どのようなものだったのか?本研究では、農耕がはじまる以前である約1万3千年前から、農耕開始期を経て約5千年前の都市文明時代までの期間における農耕と環境の変遷を、遺跡から出土した植物資料の同定から明ちかにしようとするものである。 本年は、以下の3点を中心に研究を進めた。1.西アジアの植物同定をするための基礎資料を整備する目的で、現生植物標本の電子顕微鏡による組織観察を粛々と行った。電子顕微鏡レベルでの植物同定は、西アジアの考古遺跡ではこれまで事例が限られていたため、貴重な研究資料である。2.トルコで農耕開始の直前期とみられるハサンケイフ・ホユック遺跡(新石器時代PPNA期)が発見されたことから、この遺跡の発掘調査に参加して考古植物サンプルを回収した。このサンプルは実験室に持ち帰り、実体顕微鏡による種の同定を行った。また本遺跡に近いサラット・ジャーミー・ヤヌ遺跡(土器新右器時代)でも過去に大量にサンプリングした資料があったため、これも現在、種の同定を進めている。3.農耕開始以前の貴重な資料であるデデリエ遺跡(ナトゥーフ時代、シリア)の考古植物について、同定作業を進めた。 研究内容の普及面では、NHKスペシャル(「ヒューマンなぜ人間になれたのか・第3集大地に種をまいたとき」2月19日放送)にて、人類の農耕開始に関して解説を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初は、震災による交付金の減額保留で備品購入の判断と計画修正に迷いやや研究が遅れた。年度後半は順調に進展した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の全体計画は、おおむね当初の計画通りに進めればよいと考えている。ただし西アジアのシリアにて植物のフィールド観察調査を予定していたが、昨年来のシリア政治情勢の悪花により、これについては変更せざるを得ない。隣国トルコでもこれまで発掘調査を行ってきた経緯から、トルコにて新たな調査地を探すことで対処する方針である.観察適地をみつけるために時間がかかること、および生育している植物相の若干の違いのために、扱える植物種に制限がでてくる可能性も予想される。そのようなことはあるにせよ、考古遺跡からすでに回収されている植物資料が研究のコアである本研究では、全体の研究計画の大勢にまでは影響しないと考えている。
|