研究課題/領域番号 |
23682009
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
丹野 研一 山口大学, 農学部, 助教 (10419864)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 考古植物 / 先史学 / 環境 / 西アジア |
研究実績の概要 |
西アジアにおいて世界最古の農耕が成立したころの環境を明らかにする研究を行っている。遺跡から出土した炭化種子および炭化材の種同定を行うものである。 2014年度は、最新の農耕起源論を整理して、国内向けに論述・解説した。かつては農耕起源の年代は、「7000年前より古い時期に」などのようにやや適当な数字をかかげて説明されていたのだが、おそらく主として著者のこれまでの著述活動などが功を奏して約1万年前に農耕が生まれたことが本邦でも定着してきていた。そして今回の著述で近年10年弱ほどの考古植物学の進展を紹介し、約1万年前の前後数千年をかけてゆっくり農耕が発祥したこと、および西アジアの広域で同時期に、多元的に農耕が発祥したことを、おそらく本邦ではじめて具体的に解説したことになろうかと思う(池袋サンシャインシティ古代オリエント博物館にて公開講演、「西アジア文明学への招待(悠書館)」)。 年度当初に計画していたチャハマック遺跡(イラン新石器時代)、タンゲシカン遺跡(イラン上部旧石器時代)などの最終同定については、進捗が遅れている。これは借用予定になっていた大学のオープンラボが学内事情により使えなくなったこと、またその決定が遅れて作業場所が確保できずに農繁期になってしまったこと、また2014年度には本研究を希望する学生がいなかったことが重なったためである(これらは2015年度にはすでに解消できた)。2014年度に行った具体的な調査内容としては、まずイネ科Triticeae植物のDNA分析およびタンゲシカン遺跡の植物同定の継続分を行った。現地調査は、継続して行っているトルコ東部ハサンケイフ・ホユック遺跡(新石器時代PPNA期)、および新規発掘のイラク中東部サイド・アハマダン遺跡(土器新石器時代)において植物遺存体のサンプリングを行った。同定作業は現在継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
育児休業取得による遅れを2013年度に取り戻したところではあったが、2014年度には貸借が約束されていたオープンラボが学内事情により使うことができなくなり、またその結果連絡が延滞したため海外渡航や植物栽培管理など他の業務との作業集中が重なり対処ができなくなった。また本研究をサポートする学生が2014年度にいなかったこともあり、他の分析実験を行う学生数が増えて作業スペースが圧迫され人的補助も限定的になってしまった。当年度は私自身も他機関研究者との連携的な別研究で想定以上の時間と労力をとられ、顕微鏡をじっくり見る時間が満足に確保できなかった。本研究は植物同定の最終段階で広い作業スペースを比較的長期間必要とするものであり、研究の成熟するこの時期に研究スペースの変更は痛手となった。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度はオープンラボが既に借りられており、また学生1名がついたので、前年の大きな問題は解決した。他の業務(植物栽培)で7月まで農繁期であり作業時間をあまり割けない中で前年の遅れを取り戻すためにパートの雇用、顕微鏡増設などを検討中である。研究とりまとめはやむなく年度後期から開始する。
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