これまでに引き続き、最終年度もモンゴル国トゥヴ県ズーン・バイトラグ川流域の調査を9月に実施した。今年度はホスティン・ボラグ遺跡製鉄地点や窯址地点、そしてナムサリーン・オハー遺跡で墓の発掘調査を実施した。 製鉄地点では新たに鉄滓や炉壁の廃棄土坑などを検出するとともに、新たなタイプの製鉄炉を確認した。このタイプの製鉄炉は南シベリアのミヌシンスク盆地で見つかっており、技術的な系譜関係が注目される。また、窯址地点では匈奴時代の土器や瓦を焼いた窯址の痕跡が複数確認された。そして、ナムサリーン・オハー遺跡では匈奴の一般墓を一基発掘調査した。木棺や人骨が検出され、副葬品として鉄製馬具や鉄鏃が出土した。人骨については現在、人類学的な調査を実施中である。 これまでの研究により、モンゴルでは初めてとなる製鉄遺跡の調査に成功するとともに、ズーン・バイトラグ川流域で匈奴時代の様々な遺跡の調査を実施することで、文献資料からイメージされる匈奴とは異なる、匈奴の実態を明らかにすることに成功しつつある。今後は研究メンバーを拡充しながら、研究を展開していきたい。 なお今年度の研究成果は、韓国考古学会全国大会や日本鉄鋼協会鉄鋼プレゼンス研究調査委員会をはじめとして国内外の研究会・シンポジウムなどで発表している。また研究成果の一部についてはNHK BSプレミアム 古代中国よみがえる伝説「第三集 漢武帝と司馬遷」などに取り入れられている。
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