ペルー北部高地カハマルカ地方に位置するエル・パラシオ遺跡第3次発掘調査(2012年実施)出土遺物の分析を継続した。同遺跡は後9-10世紀に台頭したワリ帝国の行政センターであると考えられる大遺跡である。地表から建物が観察できず、発掘した箇所が全体の中のどのような位置づけであるかが分からないため、できるだけ広い範囲で4つの発掘区を設定し、発掘調査を実施した。同じ場所で建築物の改修が繰り返されることなどの共通点が発掘区全体に認められることが確認されていたが、土器の出土傾向も共通することが確認できた。 今年度は土器分析を中心に行い、全出土土器のタイプ分類を確定し、タイプごとの頻度を計算するための土器片ごとのカウントを行った。エル・パラシオ遺跡では複数の建築フェイズが確認されており、建築との共伴関係を踏まえ、土器編年を精緻化した。また土器タイプの多様性が民族集団の多様性に対応するならば、エル・パラシオ遺跡では在地のカハマルカ文化の人々のほかに、他地域出身の人々が活動していたと考えられる。さらにB1区で検出された奉納コンテクストの土器の接合作業を行い、大型のコップ形土器がペアで使用されていたことなどを確認した。コップをペアで使用することは後の15-16世紀のインカ帝国で認められる特徴であるが、それがワリ帝国まで遡ることが明らかとなった。土器サンプルの写真撮影を行い、図面化を進めた。 土器以外の出土遺物についてはクリーニングと註記を終了した。
|