今年度は、石器や装身具などを分析した前年度までの総括に加え、新たに放射性炭素年代測定や窒素・炭素安定同位体比分析などを組み合わせた学融合的研究を進めた。特に韓国出土炭化穀物遺体に対する窒素・炭素安定同位体比分析により、青銅器時代前期のイネの栽培形態を陸稲としてきた従来の説に対して反証を試みたことは、学会でも評価されるところとなり、日本文化財科学会ポスター賞を受賞した。この研究により、陸稲ないし焼畑から水田へという「発展」史観は再考を迫られることになる。東北アジアの周辺地域において、稲作がはじめから水稲として導入されたかどうかにはまだ確証が得られていないが、蓋然性としてはそれが高いことが分かってきた。
|