研究課題/領域番号 |
23683003
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
伊藤 恵子 専修大学, 経済学部, 教授 (40353528)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 経済政策 / 輸出 / 海外直接投資 / イノベーション / 生産性 / 企業成長 |
研究概要 |
本研究は、国際化とイノベーションの相互作用がどのように企業パフォーマンスの向上に結びつくのかをミクロ・データを用いて分析することにより、海外市場からの学習効果のメカニズムを解明するものである。本研究では、日本について実証的に分析し、東アジアの成長モデルにおける国際化とイノベーションの相互作用について、さまざまな政策的含意を引き出す。また、日本では、中小企業に対する輸出促進など、政策的に企業のグローバル化を支援する方向の議論が活発になっているが、実証研究結果に基づいた具体的な政策提言を行うことも目指す。 このような目的のため、平成24年度は、主に3つの研究テーマをとりあげて分析した。1つめは、文部科学省『全国イノベーション調査』の個票データを利用して、企業の国際展開と研究開発の効率性との関連を分析した。海外で生産だけでなく、販売や研究開発まで行っている企業は、研究開発の効率性が格段に高いことが示された。イノベーションを行ったか否かの違いよりも、イノベーションから得られた売上高という面で、海外展開している企業はそうでない企業よりも格段に効率性が高いことが示された。2つめは、韓国企業と日本企業を比較し、生産性の格差と研究開発の収益率とを比較分析した。近年、比較的小規模の韓国企業が研究開発投資を増やしており、日本では比較的規模の大きい企業が研究開発活動を積極化させているのとは対照的であった。また、日本では小規模企業において研究開発の収益率が高いのに対し、大規模企業の収益率は低く、韓国企業と比べて格段に低いという結果であった。3つめは、日本の多国籍企業に関する国内外の生産性格差に関する研究である。日本の親会社による出資や親会社との取引が多い海外現地法人ほど生産性の伸びが高い傾向がみられるとともに、親会社の生産性が伸びることが海外現地法人の生産性の伸びにも寄与することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「9.研究実績の概要」欄に記載したとおり、経済産業省『企業活動基本調査』や文部科学省『全国イノベーション調査』を使った分析は順調に進展している。平成24年度の研究成果はほぼまとまっており、学術雑誌等に投稿できる段階にある。これらの成果は、文部科学省科学技術政策研究所や独立行政法人経済産業研究所のディスカッションペーパーとして、平成25年度上期中に公表予定である。 昨年度の成果について、雑誌に投稿中であるが、査読誌に掲載されるまでには改訂が必要であり、改訂に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は主に、経済産業省の『企業活動基本調査』と文部科学省の『全国イノベーション調査』とを個票レベルで接続したデータを利用して、イノベーション活動と国際化との関係の分析を深めていく。本研究を遂行するため、文部科学省科学技術政策研究所の客員研究官として採用されているが、引き続き文部科学省内にてデータ整理作業・分析を行う予定である。 また、韓国・Gachon大学のChin Hee Hahn准教授とASEAN東アジア経済研究所(ERIA)のDionisius Narjoko研究員と共同で、日本・韓国・インドネシアの工場レベルのデータを利用し、国際化と生産品目の変化について国際比較研究を行う。国際化が生産品目の変更、新規導入、生産停止などにどのように影響を与えているか、経済発展段階の異なる国どうしで比較し、海外市場からの学習効果のメカニズムについて理解を深めるという意図がある。
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