本研究は、国際化とイノベーションのリンケージや相互作用がどのように企業パフォーマンスの向上に結びつくのかをミクロ・データを用いて分析することにより、海外市場からの学習効果のメカニズムを解明するものである。本研究では、日本について実証的に分析し、国際化とイノベーションの相互作用について、さまざまな政策的含意を引き出すことを目指した。特に、日本では、中小企業に対する輸出促進など、政策的に企業のグローバル化支援が進められているが、実証研究結果に基づいた具体的な政策提言を行うことも本研究の目的である。 こうした目的のもとで平成23年度から研究を開始し、最終年度である平成26年度は、これまでの研究成果の取りまとめと、学会発表、学術誌への投稿作業を中心に進めてきた。具体的には、以下の4つである。1つ目は、文部科学省『全国イノベーション調査』の個票データを利用した研究結果を海外の学術誌に掲載した。2つ目は、日韓企業の生産性格差と研究開発収益率の比較研究について、学術誌に投稿し、査読者のコメントに従い改訂を行った。3つ目は、経済産業省『企業活動基本調査』の個票データを利用して、為替変動などの国際市場における不確実性と研究開発活動との関連を分析した。4つ目は、経済産業省『工業統計調査』の個票データを利用して、輸出開始後の生産品目変化について分析し、輸出による学習効果のメカニズムの解明へ向けた研究を行った。 これらの分析を通し、以下の点が明らかになった。1)輸出開始に伴い、生産品目の変更が行われており、より付加価値の高い品目が導入される一方で、より低付加価値の品目が削除される傾向が確認できる、2)韓国企業と比較し、日本の特に大企業の研究開発収益率は低い、3)為替変動の不確実性に晒される企業は、研究開発費増減の決定に際して慎重であり、不確実性の除去がより活発な研究開発投資を促す可能性がある。
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