研究概要 |
本研究の目的は,上場企業の経営者が真摯な態度で経営活動をおこない,その経営活動の結果を,財務報告を通じて中立的かつ誠実に開示することが,情報作成者にとっても有意義である,という仮説を,企業価値向上という観点から実証的に確認することにある.具体的には,短期的には費用の増大やキャッシュフローの減少など,企業にとっての不利益を招くと考えられる,定時株主総会の活性化や,温室効果ガス削減のための投資,さらに従業員教育のための投資が,中長期的には企業にプラスの効果をもたらし,企業価値の向上につながることを確認し,近視眼的な経営をおこないがちな経営者に反証を与えることを目指している.以下,研究初年度である平成23年度における状況を,テーマごとにまとめる. (1)定時株主総会活性化の影響について,株主総会活性化の指標を複数検討するとともに,株主総会活性化の程度と株式リターンの同調性(いわゆる市場モデルに基づく回帰式における決定係数)との関係について分析をおこなった.なお,このテーマについては,Louis Cheng氏(香港理工大学)との共同研究をおこなっている. (2)温室効果ガス削減のための投資が企業価値に与える影響について,その経路を明らかにすべく,SBSC(sustainable Balanced Scorecard)の概念を援用して分析をおこなった.なお,このテーマについては,阪智香氏(関西学院大学)および岡照二氏(関西大学)との共同研究をおこなっている. (3)人的資産への投資と企業価値との関連については,具体的な実証モデルを作成するための検討をおこなっている.なお,このテーマについては,Xin Chang氏(南洋工科大学)との共同研究をおこなっている.
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」欄における(以下同じ)(1)のテーマについては,共同研究者の助言を得ながら,より精緻な実証モデルを構築すべく検討中である.(2)のテーマについては,中間的な報告が日本管理会計学会英文学会誌に掲載されることが決定している.(3)のテーマについては,実証分析において必要となるデータの特定に向けて共同研究者と議論を進めている.
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