本研究は、高齢期の社会的ネットワークおよび社会活動を維持していくうえでのインターネットの役割を明らかにし、活動能力が低下しても社会とつながり続けられる豊かな高齢社会を実現するために必要な知見を得ることを目的としている。 研究の一年目には、社会関係や活動の縮小が危惧される都市部に居住する後期高齢者層(前期高齢期前後からICTを活用してきた定年退職者)を対象に、加齢のプロセスとICTの役割について質的調査を行った。年齢を重ねていくなかで、社会とつながり続けるための交流媒体としてICTを位置づける人がみられる反面、ほとんど交流媒体としてのICTを使わなくなっている人もみられた。 この結果をもとに、二年目は、東京都江戸川区に居住する一般の中高齢男女を対象に、訪問面接によるアンケート調査を実施した。合計800名を対象に調査依頼状を発送し結果、311名から協力の返信があった。回答者の8割が携帯電話を有し、4割がパソコンを保有しており、5割が交流媒体として電子メールを活用しており、メールを送った相手は配偶者や子どもが多く、また親族以外では友人、関わる団体やサークル、職場関係の人が多く含まれることが明らかになった。 三年目の本年は、これらの結果をより詳細に分析し、関連学会等での報告、原著論文(「応用年学」2014年7月刊行予定)の投稿を行った。同時に、成果の社会実装をめざし、簡易かつ具体的なメッセージに絞り込んだ一般向けの研究成果報告書をまとめ、自治体担当者や研究者だけではなく、高齢期のICT活用に取り組むNPOや地域活動団体などに送付し、多くの反響を得た。さらに、不特定多数の人々に本成果を届けるべく、電子書籍化し、所属機関のホームページを介して無料で配信を行っている。 研究期間終了後の平成26年度は、これらの成果を本として出版すべく準備を進めている。
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