研究概要 |
本研究の目的は,包括的な遠隔心理支援システムの開発である。遠隔心理支援に関する先行研究で明らかとなった重要課題を継承し,国内の要援助者の需要と状況に特化した,支援システムの開発を進める。 本年度の課題は,まず,要援助者の自殺念慮を予測する問題の把握と包括的な心理支援策の検討を進めることであった。自殺念慮の危険因子については,地域における自殺の基礎資料(内閣府)等をもとに,自殺の原因・動機に関する文献の収集を進めた。また,地域住民を対象としたネット縦断調査に備えるため,使用する心理尺度(自殺要因評価尺度)の候補となる項目選定にも着手した。自殺要因の詳細について,関連職種(心理・医療・法律・福祉・教育・家計等)の専門家と協働しながら,遠隔心理支援者が行うべき支援策と,その優先度の検討を行った。生物-心理-社会モデルに基づく,遠隔心理支援指針をまとめる方針である。 もう一つの課題は,遠隔支援者の訓練プログラムについて,検討を行うことであった。公募によって,遠隔心理支援者の候補者を集め,訓練手続きの検討を行っている。ウェクスラー記憶検査等,効果測定に必要な心理尺度を用意し,効果測定に携わる研究支援者の訓練を行った。 さらに,今後の効果研究に備えるため,遠隔心理支援のパイロットスタディに着手した。具体的には,東日本大震災の被災者を含む,全国の地域住民を対象として,遠隔心理支援の提供を行った(電話相談やSkypeによるTV電話相談)。効果研究の枠組み作りと同時に,地域貢献活動を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災の復興財源の確保を理由として,平成23年度の科研費は2分割の支給となった。第一回目の支給が遅れ,第二回目の支給については減額が示唆されたため,研究計画の円滑な遂行が困難であった。研究支援者の確保や調査の実施に支障を来したため,当初の研究計画の一部を次年度に持ち越す結果となった。
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