研究概要 |
平成23年度は一連の研究を遂行する上で必要となる顔刺激を標準化する予備調査,および誤った伝聞学習の意図的抑制を調べる研究IIを実施した。 予備調査は,150枚の顔画像を刺激として,その表情(快-不快,覚醒度)および印象(信頼性,支配性)を評定してもらうものであり,のべ約400名が参加した。予備調査のデータを用いて,表情評定と印象評定の関係について分析した結果,覚醒度は信頼性と支配性の両方と正の相関をもつのに対し,快-不快は信頼性と正に,支配性と負に相関することが明らかになった。この結果は,顔にもとづく表情認知と印象認知の密接な関係を提案したovergeneralization仮説(Zebrowitz & Motepare, 2008)を拡張するものであり,European Conference on Visual Perceptionの2012年大会などで報告する予定である。 研究IIでは,顔写真とその人物の特性(信頼できるか,できないか)のペアを記憶してもらった後,その記憶を抑制して顔写真の人物の信頼性を再評定してもらうという実験を条件設定を変えて3つ実施した。これはある人物に対する悪い評判が虚偽だとわかった場合に人間は印象を適切に修正できるかという現実的な問題の検討を目指したものである。すべての実験で一貫して,信頼できないと記憶した人物に対する悪い印象は抑制が難しいという結果が得られた。この結果は,人間の裏切り者に対する敏感性(Suzuki & Suga, 2010)に関して新たな視点を加えるものであり,Psychonomic Societyの2011年大会において一部報告をおこなった。すべての成果をまとめた論文を現在執筆中であり,Psychonomic Societyの2012年大会でも報告する予定である。
|