研究課題
平成24年度は他者の信頼性の推論と学習にかかわる神経基盤を探る脳機能計測実験(研究I)のプロトコールの確立,誤った伝聞学習の意図的抑制についての研究IIの結果をまとめた論文の執筆・投稿と追加実験の実施,および信頼性の推論と学習の年齢差を検討する研究IIIに向けた予備調査を主におこなった。研究Iについては,国立長寿医療研究センター研究所長寿医療工学研究部脳機能画像開発研究室に共同研究を打診し,研究計画の倫理審査を経て,同施設の磁気共鳴画像法(MRI)装置を用いて実施することとなった。2つの予備実験を通じてこれまで行動実験で用いてきた他者の信頼性の推論と学習を測定する心理課題(取引ゲーム)を機能的MRI(fMRI)実験向けに改変し,5名を参加者とする予備的なfMRI実験を通じて実験プロトコールを確立した。研究IIについては,平成23年度におこなった一連の実験から,伝聞を通じて信頼できないと学習した人物に対する悪い印象は,その伝聞情報が誤りだとわかっても,抑制が難しいという結果が得られていた。平成24年度はこの研究結果を日本心理学会第76回大会シンポジウムS008「利他性の進化はなぜ問題なのか」,Psychonomic Societyの2012年大会などで報告をした。さらに,研究結果をまとめた論文を執筆・投稿し,査読者から指示された追加実験をおこなった。現在,本論文は修正再審査中である。研究IIIについては,高齢者と若年者を参加者(各々102名)として120枚の顔写真の印象を評価してもらうウェブ調査をおこない,信頼性の推論と学習の年齢差を検討する実験の刺激とするのに適切な顔写真の選定をおこなった。
2: おおむね順調に進展している
3年間で予備調査,研究I,研究II,研究IIIを遂行する研究計画を申請しているが,これまでの2年間で予備調査,研究IIを終え,研究Iはデータの継続収集を残すのみであり,研究IIIは実験をおこなう準備が整っている。したがって,研究は順調に進展していると考えられる。
これまでに引き続き,研究を効率的に進めるため,大学院生にリサーチ・アシスタントや実験実施者として協力してもらう。平成24年度と同様に,脳機能計測実験や年齢差を検討する実験など複数の実験を並行して実施する予定なので,それぞれの実験を異なる実験実施者に担当してもらう。いずれの実験も特殊な装置の操作や多数の心理検査の実施など一部煩雑な手続きを含むため,円滑に実験が進むように事前に実験実施者と十分に協議する時間を設ける。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件)
Aging, Neuropsychology, and Cognition
巻: 20 ページ: 253-270
10.1080/13825585.2012.692761
Brain and Nerve
巻: 64 ページ: 1103-1112