研究課題/領域番号 |
23683022
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
北村 嘉恵 北海道大学, 大学院・教育学研究院, 准教授 (20322779)
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キーワード | 先住民族 / 植民地主義 / 台湾 / 戦争動員 / 義務教育 / 就学・不就学 / 国際情報交換 |
研究概要 |
本年度の「研究の目的」「研究実施計画」に基づいて調査・研究を進め、以下のとおり進捗をみた。 (1)総力戦下での人的・物的動員の過程、および植民地人民動員の構想・施策について、国内外の先行研究や既存の聞き取り記録の調査・収集を広く行った。 (2)植民地人民なかんずく台湾先住民の戦時動員に関する文献調査を防衛省防衛研究所や国立国会図書館、台湾の国立中央図書館台湾分館や国立台湾大学附属図書館等で行った。 (3)台湾島内外発行の新聞・雑誌(『東台湾新報』等の地方紙、相対的に在野色の強い『新高新報』等)の通覧作業を進め、1930~40年代の関連記事データを蓄積した。 (4)台湾・屏東県春日郷等の先住民居住地域にて聞き取り調査を進めながら、個人所蔵資料、郷公所所蔵資料、旧跡等の調査を行った。 (5)吉田巌関係文書(帯広市図書館所蔵)、内海忠司関係文書(個人所蔵)等の個人文書の整理を継続し、資料の恒久的保存と共有化に向けた作業を進めた。前者については、台湾関係資料について件名目録の作成を行い、所蔵機関に提供した。後者については、日記・回想録・書簡の翻刻、日記や写真に登場する人物の調査等を行うとともに、これらの資料を活用した論文を執筆してとりまとめ、「研究成果公開促進費(学術図書)」を得て公刊した。 (6)先住民史や動員史の研究者と集中的な討議の場を設けた。また、植民地への義務教育制施行過程と戦争動員との連関に関する中間的な報告を教育史学会にて行った。 以上を通じて、先住民族の個々人および地域の歴史的経験を多面的に理解する手がかりとして、写真(画像)を活用した文献・聞き取り・実地調査および相互の照合・分析が有効かつ重要であることが確かめられるとともに、個人所蔵の写真や記録など新たな資料の所在確認の見通しも得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従って国内外での文献調査、聞き取り調査を行いながら、主要史料のデータを蓄積しており、これまで活用されてこなかった史料の所在確認を含めて、台湾先住民史に関する基礎的史料の整理と共有化に向けた作業は着実に進捗している。また、これらの調査と並行して、学会発表や少人数での集中的な討議を通じて植民地史研究者や教育史研究者との議論を行い、今後の調査・分析の方法や観点の吟味を重ねている。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には当初の計画に沿って進める予定である。このうち、最終年度の初頭に予定していた先住民居住地でのワークショップについては、実施時期を本年度の半ばに繰り上げる予定である。これは、研究成果のフィードバックに先だって、一次資料を関係地域の住民と共有しながら読解していく作業の見通しが初年度の調査を通じて得られたことによる。また、第二年度の資料調査では、台湾北部を拠点として伝道活動を展開したカナダ長老教会(カナダ連合教会)に重点を置く計画であったが、予備的な資料整理の結果、南部を活動拠点としたイングランド長老教会の動向および在台ミッショナリー間の相互交渉のありようをもあわせて検討することが重要だとの見通しを得ている。このため、全体の研究進捗状況を勘案しながら、本年度末ないし最終年度にイギリスでの資料調査を加える可能性を探る。
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