研究課題/領域番号 |
23683022
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
北村 嘉恵 北海道大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (20322779)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 台湾 / 先住民 / 植民地主義 / 戦争動員 / 写真資料 / 国際情報交換 |
研究概要 |
本年度の研究計画に基づいて以下のとおり調査・研究を進めた。 (1)国立国会図書館(東京)や台湾大学附属図書館(台北)において、1930~40年代に台湾島内外で発行された主要な新聞の悉皆的な調査を進めた。昨年度に引続き、地域紙として『東台湾新報』『台南新報』、内地発行紙として『大阪毎日新聞台湾版』の通覧と目録作成を進めた。 (2)カナダ長老教会およびカナダ合同教会の文書館(トロント)にて台湾宣教関係の資料調査を行った。本年度は、両会派の海外宣教団の組織や活動内容について関連研究の知見を摂取しつつ両文書館所蔵資料の構造的な把握に努め、1860~1940年代の台湾派遣宣教師と本国の派遣母体(Foreign Mission Committees of PCC etc.)との往復書簡や各種報告書を通覧し主要資料の複製と資料目録の作成を行った。また、台湾派遣宣教師の悉皆的なリストを作成し、各人の書簡、著作、評伝等の関連資料の調査に着手した。 (3)台湾の桃園県復興郷、新竹県尖石郷等の先住民居住地域において、1930年代の写真資料・文字資料と集落・旧跡等とを実地に照合・検証した。また、関係地域の古老や郷土史・民族誌研究者の参加を得てワークショップを行い、写真資料中の人物や地点、関連事象について多面的な検証・討議を行った。 (4)「吉田巌遺稿資料」(帯広市図書館所蔵)、「内海忠司関係文書」(個人蔵)等の個人文書の整理・翻刻・分析を継続し、資料の共有化に向けた作業を進めた。前者については、台湾関係資料についての悉皆的な件名目録、主要資料の翻刻とともに、吉田巖の台湾学事視察に関する資料解題・内容分析をまとめた論考を研究誌に掲載予定である。後者については、1940~45年の日記・執務資料の翻刻と同文書を活用した論文をとりまとめ、「研究成果公開促進費(学術図書)」を得て2013年度中に公刊予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね研究計画に従って国内外での文献調査や聞き取り調査を進めており、台湾先住民族の近代史に関する基礎的史料の整理と共有化に向けた作業は着実に進捗している。本年度には、最終年度に予定していた台湾先住民居住地域でのワークショップを繰り上げて実施し、新たに「発掘」・整理を進めてきた一次資料をいちはやく関係地域の住民や郷土史研究者と共有するよう図り、資料の検証および討議を行った。これを通じて、文字資料や図像資料のみでは把握しえなかった情報を新たに得ることができ、資料読解の深化にもつながった。また、研究成果の一部については、詳細な資料目録と主要資料の翻刻・解題の公刊およびウェブサイト上での公開に向けてデータをとりまとめているほか、「研究成果公開促進費(学術図書)」を得て翻刻資料・研究論文の出版準備を進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
基本的には当初の計画に沿って最終年度の調査および成果のとりまとめを進める予定であるが、研究の進捗上、資料調査の重点につき若干の見直しを行った。すなわち、カナダ長老教会関係文書中に台湾先住民を対象とする伝道に関してイングランド長老教会の台湾派遣宣教師との往復文書を確認することができたこと、また、カナダ合同教会文書館における資料複製上の制約から所蔵資料の閲覧・整理に予想以上の時間を要することから、カナダ・ミッショナリー関係文書の整理・分析を徹底するため、米国国立公文書館での接収資料の調査予定は当面先送りする。また、イングランド長老教会側の所蔵資料から台湾先住民伝道をめぐるカナダ・ミッショナリーとの関わりを検証するため、全体の成果とりまとめの進捗状況を勘案しながら、本年度中にロンドンでの資料調査を実施するよう調整する。
|