研究課題/領域番号 |
23684002
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
荒井 迅 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (80362432)
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キーワード | 応用数学 / アルゴリズム |
研究概要 |
本研究では遷移ダイナミクスを捉えるため、不変でない集合に対するコンレイ指数の定義の研究を進めているが、本年度はその第一段階として力学系から構成した有向グラフの辺を人工的な閾値を用いて抜きさる、または重みつけを変更することにより扱いやすい力学系を構成する方法の研究を進めた。また、ソーシャルネットワークの分野で応用されているグラフクラスタリングアルゴリズムの力学系への応用についても研究を進めており、力学系のモース分解に相当する分解を少ない計算量で到達できる例を確認した。これらの実験を元にして実用的なアルゴリズムの構築を進め、まだ完成には至っていないものの、人工的な操作により破壊される構造と破壊されない構造の違いなどについての知見が得られ、今後の理論的発展および時系列解析などへの応用に役立つと期待できる。 また平行して計算コホモロジー理論の整備およびホモロジーの分散計算の研究も進めているが、この方向では複数の絡みあった結び目(絡み目)の絡み数を厳密に計算するアルゴリズムを構成することができた。これは精度保証付き数値計算による厳密な数値積分と結び目の離散的表現を組み合わせた従来にはないタイプのアルゴリズムであり、同様の方法により、さらに一般の不変量の計算アルゴリズムへと発展することが今後期待できる。結び目の離散的な表現として計算ホモロジーソフトウェアCHomPの出力をそのまま用いることが出来るため、具体的な問題への応用も容易である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遷移ダイナミクスを理解する道具として開発を進めている、力学系から得られたグラフに対する操作の研究は当初の予定より若干の遅れがある。しかし、計算トポロジーの方向で絡み目の絡み数計算アルゴリズムが得られるなどの進展があったため、総合的にはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年までの研究により、力学系から得られたグラフに対する人工的な操作がもたらす不安定性についてある程度の知見が得られたので、これを安定化するため、JungeやFroylandらのグループが研究している測度論的な取り扱いとの融合を進める。計算トポロジーの方向では、昨年度に得られた絡み目のアルゴリズムを発展させて、一般のホモロジー代表元に対する交点数の計算アルゴリズムの構築を目指す。
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