本研究では様々な数理モデルに表われるダイナミックな構造の変化を解析するための新しい数学的手法を開発することを目標としている。遷移ダイナミクスなど呼ばれる、時間発展に対して不変ではない構造の解析に用いることを目標とする点が従来の研究とは大きく異なり、特に力学系や流体力学的な流れの時間発展の構造を有向グラフで表現し、そのグラフに対して様々なアルゴリズムを適用し て構造の変化の情報を引き出す研究が主な対象である。 本年度は昨年度に引き続き、力学系から得られた有向グラフに対して様々なグラフクラスタリングアルゴリズムを適用して得られるクラスター分解の力学系的な意味づけや、アルゴリズムの安定性などを主として研究し、またその応用として流体力学の問題への適用を進めた。応用の成果として、流体の構造に即した相空間の分解を高速に得るアルゴリズムを構成することができた。 また、組合せ的ホッジ分解の手法を用いた擬アプノフ関数アルゴリズムの研究も進めた。アルゴリズムの高速化や安定化の研究を進めるのと平行して応用の研究にも着手し、非線形レスリーモデルという人口予測モデルにおける、勾配的な力学系構造の抽出に成功した。
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