研究概要 |
フェムト秒時間分解電子線回折装置の建設を行った。本装置は反射型と透過型の2通りの実験配置が可能であり、薄膜試料及びバルク単結晶の構造解析が行える仕様とした。フォトカソード電子銃から照射されるパルス電子線を用いて、マイカ等の標準試料の透過型及び反射型電子線回折像が得られることを確認した。さらに透過型配置において、金の単結晶薄膜を用いた時間分解測定に成功し、ブラッグピーク強度が10psの時間スケールで減衰する様子を観測した。また、現状の本装置の総合時間分解能は少なくとも2ps以下と見積もられた。 時間分解電子線回折実験に適した試料を探索するために、角度分解光電子分光を用いた様々な物質の電子状態観測を並行して行った。その結果、鉄系超伝導体BaFe2(As,P)2及びFeSeに対して構造相転移とほぼ同温度において発達する軌道秩序を見出した。さらに軌道秩序温度近傍から生ずる擬ギャップ相を見出し、本物質の異常な常伝導電子状態の存在を明らかにした。格子、スピン及び軌道が関与した複雑な相転移現象を示す鉄系超伝導体を研究対象に選び、これまでに薄片化の容易なFeSe単結晶の透過型電子線回折像を得ることに成功した。
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