研究課題
(1)遠く離れた量子ドット間のコヒーレントな単一電子輸送表面弾性波(SAW)を用いて、遠く離れた量子ドット間で単一電子をコヒーレントに移送する技術の開発に成功し、移送効率が90%以上であることを確認した。移送中の電子を周囲の電子から隔離していることや移送にかかる時間が短いことから、単一電子スピンの量子情報を保ったまま高効率で移送できていると考えられる。また、量子ドット中の量子もつれ状態の2電子を分離し、1電子だけを離れた量子ドットへと移送することにも成功した。これは、量子情報処理において重要な非局所量子もつれ状態の生成に相当する。(2)飛行量子ビットの多量子ビット化とベルの不等式の破れの検証単一電子レベルでの飛行電荷量子ビット制御を目指し、そのセットアップを進めた。(1)で示した研究によって開発が完了しているSAWの技術に加え、電子ポンプの技術の立ち上げを行い、単一電子ポンプに成功した。これを飛行量子ビットの制御系と組み合わせた実験は現在も進行中である。(3)飛行量子ビットと近藤効果飛行量子ビットの制御系(干渉計)と近藤状態にある量子ドットとの間に量子もつれを生み出すことによって近藤状態における量子ドットを通過する電子の伝播位相や近藤雲の広がりに関する情報が得られることを考え、これを新たなテーマに加えて実験に着手した。今年度は伝播位相の測定を行い、理論で予測されているように、近藤谷で位相がpi/2で固定される様子を観測した。これは、近藤一重項状態の直接的な証明とされる新しい重要な結果である。
1: 当初の計画以上に進展している
遠く離れた量子ドット間の単一電子の移送の実験が予想以上に順調に進み、予定をはるかに超えて当初は最終年度に行う予定であった非局所量子もつれの生成と思われる結果まで得ている。飛行電荷量子ビットに関しては、電子ポンプなどの開発が順調に進んだ他、当初の予定にはなかった近藤効果と組み合わせた研究にも取り組み、学術的に非常に重要な結果が得られている。
H23年度は当初の予定より順調に進んだため、予定された内容に加えて新たにテーマを加えつつ、関連する物理の考察を深めていきたい。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (15件) 備考 (4件)
Nature Nanotechnology
巻: 7 ページ: 247-251
Applied Physics Letters
巻: 100 ページ: 033113
10.1063/1.3676441
Physical Review B
巻: 85 ページ: 041308(RC)
10.1103/PhysRevB.85.041308
Nature
巻: 477 ページ: 435-438
巻: 84 ページ: 161408(RC)
10.1103/PhysRevB.84.161408
http://www.meso.t.u-tokyo.ac.jp/
http://www.t.u-tokyo.ac.jp/epage/release/2012/12031901.html
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20110922/index.html
http://www.t.u-tokyo.ac.jp/epage/release/2011/092201.html