研究課題/領域番号 |
23684020
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
藤井 律子 大阪市立大学, 複合先端研究機構, 特任准教授 (80351740)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 光物性 / 生体分子 / 光合成アンテナ / 太陽電池 / クロロフィル |
研究概要 |
クロロフィル(Chl) c は、海洋性光合成生物において光合成アンテナタンパク(FCP)に結合して、太陽光エネルギーを吸収して反応サイトへ励起エネルギーを伝達する「集光作用」を担う天然ポルフィリン色素である。一方、色素増感太陽電池において酸化チタンへの電子注入を行い、約5%の高い光電変換効率を示す。しかしながら、これらの光応答の鍵となるChl cの光励起状態については解明されていない。本研究の目的は、オキナワモズク盤状体を用い、向流クロマトグラフィーを利用することにより、微量成分であるChl cの大量調製を実現し、時間分解分光によりChl cの光励起状態を解明する事である。本年度は、グロースチャンバーなどを導入してオキナワモズクの培養を制御することにより、Chl cの精製における不純物の混入を最小限に抑えながら、向流クロマトグラフィーとHPLCの併用により、純度の高いChl c1とc2を単離する事に成功した。昨年度から試みていた、溶媒のpH変化による光応答の変化を定量的に解析するための実験系を確立し、測定点の数を増やすことにより、変化量を明確にする事に成功した。さらに、有機酸の酸解離平衡(R-COO-とR-COOH の平衡)をおこす部位をメチルに置換したR-COOMeを用いた対照実験を行い、この変化が極めて良い近似として有機酸の酸解離平衡だけで記述できる事を解明した。この実験で明らかにした塩基性条件(Chl cはR-COO-の状態)でフェムト秒時間分解吸収スペクトルを測定する事に成功した。スペクトルの解析は予想より複雑であったが、今後、解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の実施計画であったChl cの大量調製系の確立は、培養時の環境の制御、HPLCによる精製の手法により、およそ達成した。本研究目的であるChl cの励起状態の解明について、重要な情報を与える、Chl cの酸解離平衡における光応答について、極めて詳細に解明する事に成功し、その一方の構造をとる条件でフェムト秒時間分解吸収分光を行ったため、「研究の目的」に向けておおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
培養から精製までを一貫して行うシステムを継続して構築し、Chl cの大量調製を実現する。また、新たに解明したChl cの酸解離平衡における二つの極限構造における電子状態をQM/MM計算などの手法を取り入れて明らかにしつつ、励起状態の完全解明を達成する。また、FCP蛋白を調製し、生体内におけるChl cの役割を解明する。
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