研究課題/領域番号 |
23684021
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
小林 隆史 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10342784)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 有機薄膜太陽電池 / 光物性 / 緩和過程 |
研究概要 |
前年度、実際のバルクヘテロ接合型太陽電池を用いてキャリア寿命や移動度を決定する光誘導吸収測定系を構築した。今年はこの測定系を駆使し、開放回路条件から短絡回路条件までの任意の動作点でのキャリアの緩和過程を、特にトラップキャリアに注目して調べた。トラップに捕えられたキャリアは、内臓電場を局所的に弱め、結果的に太陽電池の特性を低下させることが知られている。本研究により、バルクヘテロ接合太陽電池には多くのトラップ準位が存在するが、比較的準位が浅く、短絡条件で生じる内臓電場でその大半が吐き出されることを明らかにした。また一般的に用いられるフラーレン誘導体(PCBM)よりも高い変換効率の得られるICBAを用いた有機薄膜太陽電池についても評価を行った。その結果、ホールの移動度そのものは低下するものの、キャリア寿命が増大することにより、高い取り出し効率が維持できていることが分かった。なおこの評価において、一般的な方法(移動度と寿命の積;μτ積)により評価を行うと、太陽電池特性とは相関が得られないことが分かった。そこで有機薄膜太陽電池ではキャリアが二分子再結合過程で緩和することを考慮して、新しい取り出し効率の評価法を考案した。この方法で求めた取り出し効率は実験結果と強い相関があることが確認できた。また、本研究課題では、有機薄膜太陽電池の高効率化にも取り組んでいるが、P3HTとPCBMを用いたセルでは3.7%、ICBAを用いたセルで5.0%の太陽光電変換効率が達成できている。上記の緩和過程に関する結果は、これらの太陽電池を対象に評価を行っており、したがって高いレベルでの緩和過程の議論ができているものと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究内容は当初計画よりも早く進んでおり、平成25年度に予定していた新規材料についても今年度着手することができた。しかし成果発表が遅れており(現在、論文を2本投稿中)、その点を勘案し、「(2)おおむね順調に進展している」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでは主に高分子材料にできる正孔に着目して議論してきたが、フラーレンにできる電子の寿命や移動度が評価できないかについて検討する。電子と正孔の移動度を測り分けることができれば、移動度バランスという視点からさらに深くキャリアの緩和過程(失活過程)が調べられるはずである。また一般的なP3HTとPCBMからなる有機薄膜太陽電池よりも高い変換効率の得られる材料として、平成24年度に取り組んだフラーレン誘導体に加え、平成25年度はローバンドギャップポリマーについても検討を行う計画である。予備実験により既に最大7%超の変換効率が得られており、このセルを用い、より高い次元での緩和過程の解明に挑む予定である。
|