研究概要 |
本研究の目的は,リチウムイオンポリマー電池素子構造を用いて電気化学的にリチウムイオンを強相関電子材料に挿入-税離し,電圧でドーピングレベルを制御することにあります。この構造を用いることで、(1)ケミカルドーピングでは到達できないドーピングレベルへの拡張、(2)バルクドーピングによる高温超伝導,強磁性等の物性制御が可能となるため、新しい原理による電圧駆動強相関デバイスの創製が期待されます。平成23年度は銅酸化物高温超伝導体Bi_2Sr_2CaCu_2O_8(Bi2212)を作製し、電気化学的にリチウムイオンを挿入し、超伝導相転移温度を制御することに成功しました。ITO、基板上に塗布したBi2212を正極とし、リチウム金属を負極として用い両極間に電流を通電することで異なるリチウムイオン濃度を持つ試料を作製しました。放射光X線回折、X線吸収微細構造実験により、これらの試料の格子定数と銅イオンの価数が系統的に変化することがわかりました。このことはBi2212の層間へのリチウムイオンのインターカレーションを示しています。またリチウムイオン挿入量の増加と共に超伝導相転移温度が76Kから90Kまで上昇し、その後高ドープ域で超伝導が消失することを見出しました。これらの結果は、電圧によってバルクドーピングによる高温超伝導制御が可能であることを明確に示しており、電界効果トランジスターを用いた物性制御とは異なる新しい原理による電圧駆動強相関デバイスの創製の可能性を示しています。
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