研究課題/領域番号 |
23684024
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
石川 文洋 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (50377181)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 超伝導材料 / 低温物性 / 高圧下物性 / 鉄系超伝導 |
研究概要 |
鉄ニクタイド系単結晶の超伝導に対する一軸圧効果は、低い圧力で高い超伝導転移温度を誘起している。このことから本研究では鉄オキシニクタイド超伝導体の単結晶を育成し圧力下物性測定を行うことで超伝導に対する圧力効果の機構を解明をめざす。これまでに多層構造を持つ新しいオキシニクタイドとしてSr2CrFe2As2O2の合成に成功した。この物質と同じ結晶構造を持つ物質としては初めてFeAs層を有する物質であり、新しいオキシクニタイド超伝導体の母物質になると考えられる。多層構造をもつ他のオキシニクタイド、例えばSr4V2Fe2As2O6はドーピングは圧力印加なしで超伝導を示すが、Sr2CrFe2As2O2は超伝導を示さなかった。Sr2CrFe2As2O2に対して、これまでの鉄オキシクニタイドの例を参考にCrサイトをCu、などで、FeサイトをCoで置換することでキャリアドーピングを試みたが、電気抵抗率の低下は見られるものの、温度依存性は半導体的であり、超伝導の兆候は観測されなかった。一方、Sr4V2Fe2As2O6の単結晶育成は、小さい試料であるが育成には成功した。他グループで報告例があるものと同程度のサイズであり、本課題で目指す圧力下の電気抵抗測定に用いるほどの大きさのものを現段階では育成できなかった。 初年度の導入した超伝導マグネットシステムと第二年度に導入した交流レジスタンスブリッジ微小抵抗測定装置と組み合わせてホール効果測定システムを立ち上げた。Pr系銅酸化物超伝導体のホール係数の酸素欠損量依存性を明らかにし、Bi2Te3のような半金属化合物の圧力下ホール効果測定を行った。極低温測定が可能な小型圧力セルの開発を行い、これをホール効果測定システムと組み合わせることで、極低温でのホール効果測定を可能とした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画においては、いくつかの鉄系オキシニクタイド単結晶試料の育成に成功し、それらの物性測定をおこなうことを目指していたがホール効果測定以外の物性測定に至らず、その準備も十分にできなかった。新構造を持つ物質の合成には成功したが、超伝導物質化にはいたらず高圧印加によっても超伝導転移は見られなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
Sr2CrFe2As2O2系の新物質探査を行う。これまで試みていないSrサイト置換やAsサイト置換により超伝導物質化を計る。物性測定に関してはホール効果測定に注力し、より高精度の測定を可能とする。オキシニクタイド系に限らずBaFe2As2など大型単結晶育成に成功している物質を用いて、異方的圧力効果の実験を電気抵抗測定、ホール効果測定を行う。
|