研究課題
研究計画では、2011年度は以下の3つの目標を掲げていた。1.イオン液体電解質を用いた高密度キャリア注入技術の確立、2.原子層堆積法を用いた極薄絶縁膜を用いたキャリア注入技術の確立、3.高密度キャリア注入による様々な電子相転移の研究。それぞれの研究に関して、本年度は以下の成果をあげた。1,3に関しては、(1)酸化物絶縁体であるVO2に、イオン液体をゲート絶縁層として利用したトランジスタ構造を用いて電子を注入することで、室温で金属-絶縁体転移の制御に成功した。通常トランジスタ構造を用いた場合には、電子は絶縁体/半導体の間の界面のみに注入されるが、VO2の場合は界面だけでなく、薄膜単結晶全体に電子が注入されることを確認した。(2)イオン液体の作り出す強電界を利用して、金属磁石であるコバルトの強磁性-常磁性転移温度(キュリー温度)を100度以上電気的にスイッチすることに成功した。(3)ワイドギャップ半導体であるダイアモンドに、イオン液体を用いて電子注入を行い、トランジスタ動作に成功した。(4)イオン液体電解質を用いて電気化学発光セルの試作に成功した。など4つの成果をあげることができた。2に関しては、原子層堆積法を用いて、有機半導体の上に直接、酸化物の絶縁膜を成長させる無機-有機ハイブリッド半導体デバイスの試作に成功した。従来の有機デバイスに比べて、低電圧駆動が可能になると同時に、酸化物の絶縁膜による有機半導体の封止により、寿命が飛躍的に上昇した。など成果をあげることができた。
1: 当初の計画以上に進展している
イオン液体電解質を用いたキャリア注入に関して、共同研究により、数多くの試料を手にいれることができ、それぞれの試料を用いて実験をおこなうことで効率的に成果をあげることができている。また原子層堆積法に関しては、専門家の意見を取り入れる事で、比較的スムーズに絶縁膜の作製を行う事ができた。
基本的には、研究計画を変更なしで進めていく。今後は、イオン液体電解質及び原子層堆積法による絶縁膜を利用したハイブリッドデバイスの作製を行い、詳細に電子状態を変化させた際の物性測定を行っていきたい。また低温物性測定装置が立ち上がったので、低温における詳細な電気物性の測定を行っていく。また試料に関しては、継続して共同研究を行う事で、幅広く集める。
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