研究課題/領域番号 |
23684032
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鳥井 寿夫 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (40306535)
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キーワード | 量子光学 / レーザー冷却 / ボース凝縮 / 量子縮退気体 / 原子光学 |
研究概要 |
量子原子光学の研究をボゾン(ルビジウム原子)のみではなく、フェルミオンでも行うため、ルビジウム原子、リチウム原子、およびストロンチウム原子を同じ真空チャンバー内で同時に磁気光学トラップするための装置を開発した。今年度は特にリチウム原子のレーザー冷却の光源の立上げ、およびリチウム原子ストロンチウム原子混合オーブンおよびゼーマン減速器の開発を中心に行った。混合オーブンでは、ストロンチウムとリチウムの塊は同一の場所(エルボー)に置かれ、約400度に加熱される。原子ビームの生成は、水冷ニップルにつけられた2枚のニッケルガスケット(間隔10cm)に開けられた直径5mmの開口によって行う。オーブンは40L/sのイオンポンプで排気され、内径5mm、長さ10cmの差動排気チューブを通してゼーマン減速器につながる。オーブン駆動時の真空度は10^-8Torr台であった。ゼーマン減速器は長さ0.4mのスピンフリップ型で、入り口と出口の磁場の差は850Gであり、リチウム原子では800m/s、ストロンチウム原子では550m/sの捕獲速度に対応する。リチウム原子のレーザー冷却のための光源として、波長670nmのARコート付半導体レーザーを用いた外部共振器型半導体レーザーを作成し、これを種光として半導体テーパー型増幅器で500mW程度にまでパワーを増幅した。レーザー周波数安定化のためのリチウム原子気体の分光法として、ヒートパイプを用いた偏光分光法を用いた。適切なアルゴンバッファーガスの圧力の下では、偏光分光信号が増大する効果を見出し論文にまとめた(Optics Letter誌に投稿中)。作成したリチウム・ストロンチウム混合オーブンおよびゼーマン減速器と既存のルビジウムオーブンおよびゼーマン減速器を同一の超高真空チャンバーに接続し、リチウム・ルビジウム、ルビジウム・ストロンチウム、およびストロンチウム・リチウムの同時磁気光学トラップを実現した。特にストロンチウム・リチウム同時磁気光学トラップに関しては文献がなく、我々が世界で始めて実現したものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リチウム原子、ルビジウム原子、ストロンチウム原子の同時磁気光学トラップに世界で初めて成功し、次年度以降の研究の基盤が確立したため。
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今後の研究の推進方策 |
リチウム原子およびルビジウム原子の同時磁気光学トラップをスタートラインとして、ルビジウム原子のマイクロ波蒸発冷却を用いたリチウム原子の協同冷却を試みる。フェルミオンであるリチウム原子の量子縮退気体を生成し、フェルミオンにおいて超放射散乱が観側されるか実験的に検証する。
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