本研究目的は、「強相関フェルミ気体の二流体現象の観測と輸送係数の測定」である。そのため、安定なフェルミ超流動の実現が必須となる。 平成25年度の主な成果は「安定なフェルミ超流動の実現」と、「二流体現象の観測へ向けた予備実験」である。特に我々は国内初となる高強度レーザーを用いた実験手法を用いており、この手法が確立すると実験が簡易になり研究の加速が期待される。具体的に行ったことは、①原子の相互作用の高精度な制御と磁場ポテンシャルの高精度な評価を行うため、コイルに流す電流の安定化を行った。これにより800ガウスで100mG程度あった磁場の揺らぎを、5mG程度に改善する事ができた。②散乱長が発散しているユニタリー極限において蒸発冷却を行ったところ、T=0.05TFまで温度が下がり、クーパー対の重心運動量分布を測定した結果、超流動転移が確認された。③超流動転移が確認されたが再現性が悪かった。我々の実験手法は、レーザー冷却されたリチウム原子を、100Wの高強度レーザーで捕獲する手法を用いている。手法としては最も簡易であるが、高強度による熱レンズ効果の問題は、国外の先行研究でも回避できていない。我々は熱レンズ効果を軽減させるための光学系を考え、また全ての光学素子を高強度用の素子に変える事により、熱レンズの効果が100倍程度緩和された。結果として安定に超流動状態が実現できるようになった。我々は現在、この超流動状態を用いて研究課題を遂行中である。これまで、超流動状態の原子集団に近共鳴光をパルス的に当て瞬間的に加熱し、凝縮体が時間的に変化していく様子を観測している。現在原子全体に加熱を起こさせているが、今後は局所的に加熱し、熱の伝わり方が超流動密度でどのように変化していくか研究し、超流動と常流動の二流体現象の観測に挑んでいく。
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