研究課題/領域番号 |
23684038
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
境 毅 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (90451616)
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キーワード | 惑星内部構造 / スーパーアース / 超高圧物性 / 物性実験 / 固体地球物理学 |
研究概要 |
地球型惑星を構成するもののうち最も基本的な酸化物であるMgOについて、308GPaまでの圧縮に成功した。この圧力は地球でいえば核に相当する圧力である。レーザーアニーリングによりMgOおよびPtの試料室中の応力状態を表すSt値は全ての圧力条件で0.005以下に抑えることができた。また計算された一軸応力の値はMgO、Ptともに全ての圧力条件で6GPa以内であり、最高圧力308GPaにおけるPtの一軸応力は0.5GPaであった。このことから、ほぼ準静水圧環境での圧縮に成功し、質の良いデータを取得することができたと考えられる。圧縮曲線を3次、4次および5次のBirch-Murnaghanの状態方程式(B-M EoS)、またはVinetの状態方程式(EoS)でフィッティングし、各種状態方程式のパラメータを得た。ここでV_0については74.68A^3(JCPDS Card45-0946)として固定した。先行研究のよるデータからの外挿では300GPa領域での体積についてはどの状態方程式を使用するかによって大きなばらつきがあったが、今回実験で直接測定したデータでキャリブレーションすることにより、状態方程式による違いは殆どなくなり整合性あるものとなった。これらのEoSは、V/V_0=0.49程度(圧力で500GPa程度)までは7GPa以内(約1.4%以内)で一致した。MgOは400~500GPa程度の圧力でNaCl型からCsCl型への相転移が予想されているが、今回の結果は相転移前の圧力まで一定の精度で適用可能と思われ、スーパーアースのマントルの密度構造などの議論に有用であることが期待される。 また、核を構成する物質の候補であるFe-Ni-S合金について、学術論文として公表した。335GPaまでの圧縮データに基づき、純鉄やFe_<80>Ni_<20>の密度と比較することにより、地震学的に測定されている地球の内核の密度は5wt.%のニッケルと5.7wt.%の硫黄が鉄に固容することで説明可能であることを示した。さらに中間化合物である(Fe_<0.89>, Ni_<0.11>)_3Sの圧縮挙動・安定性についても学術論文として公表した。地球の核マントル境界圧力における密度の比較を、純鉄やFe_<80>Ni_<20>の密度と比較することにより地球の外核の密度は7.4-13.1 wt.%の硝黄で説明できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度目的であったMgOについての300GPa以上の圧力までの高圧実験は達成され、PtとMgOのマルチメガバール領域における圧力スケールの整合性について高圧討論会およびアメリカ地球物理学連合秋季大会にてその成果を公表した。またAl_2O_3についても200GPa以上の圧力までの圧縮実験に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はAl_2O_3について300GPa以上の圧力までの圧縮実験を進めるとともに、マントルの主要構成物質であるMgSiO_3の圧縮実験にも着手予定である。一方、高温下でのデータ取得に関しては、高温になった試料部とアンビル材であるダイヤモンド間の断熱の問題や、高温発生用のレーザーの安定性や強度プロファイルの観点から、十分に質の良いデータの取得ができていない。これに対し、電気抵抗式の加熱方法を取り入れるとともにダイヤモンドアンビルの形状についても見直しを行い、安定した高温条件発生を達成し質の良い高温データを取得できるように工夫しておく予定である。
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